マハティール凋落が象徴するマレーシア政治の新局面
アンワル首相の就任
97歳にして総選挙に出馬し落選したマハティール元首相 (c)Zulfadhli Bin Zulkifli/shutterstock.com
2022年11月19日、マレーシアでは下院総選挙が実施された。同国では議会で安定多数を確保する主要政党がない中、連立の合従連衡と組み換えから4年間で3回も内閣が変わり、不安定な政情にあった。今回の総選挙でも定員222議席の過半数を獲得した主要政党は出ず、政党連合間の激しい駆け引きと国王による調整を経て、11月24日に野党連合「希望連盟」(PH)を率いるアンワル・イブラヒムが首相に就任した。 総選挙の詳細な結果を見ると、イスマイル・サブリ・ヤーコブ前首相の所属する「統一マレー国民組織」(UMNO)を含む与党連合「国民戦線」(BN)は30議席の獲得にとどまり、改選前42議席から大きく後退した。一方、アンワルの率いるPHは改選前91議席から議席を減らしたが、最大議席である82議席を確保した。また、解散前まで連立政権の一角を占めたムヒディン・ヤシン元首相の率いる政党連合「国民連盟」(PN)も、改選前39議席から73議席と大きく躍進した。この結果を受け、国王は混乱回避のため異例の調整を行い、PHにUMNOや地方政党が支持を与える形で、連立政権が成立することになった。 この総選挙は、不安定な連立政権体制が継続せざるを得ない曖昧な結果となった一方、一つ明確になった点もある。それは、かつて20世紀後半から21世紀初頭まで、圧倒的勢力を誇ったUMNOを中核とするBNの退潮はもはや不可逆であり、それに代わる保守系勢力PNの躍進と、今や野党から転じて再び与党連合となったPHの拮抗という、新しい政界の構図が成立したことである。
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久末亮一