大迫傑がSNSで訴えた問題は正論か? 日本陸連が示すべき道とは?
サッカーの代表監督は、自国のクラブチームの監督を兼任することはほとんどない。しかし、日本陸連の場合、強化担当の大半が、実業団や大学の指導者だ。システマチックに選考しない限り、妙な力が働いていると勘繰られてもおかしくない。 今回の日本選手権はドーハ世界選手権の選考会を兼ねているが、現時点でドーハ世界選手権1万mの参加標準記録(27分40秒00)を突破している選手はゼロ。日本勢の最高タイムは鎧坂哲哉(旭化成)の27分55秒85で、参加標準記録のクリアは簡単とはいえない。 その一方で、すでに世界ランキング制度(タイム、大会のグレード、順位によるポイント制)がスタートしており、今後、世界大会に出場するには世界ランキングの順位を上げることが重要になってくる。日本陸連が、「負けた選手のランキングが下がる」という理由を挙げていることを考えると、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を得ている井上大仁(MHPS)、藤川拓也(中国電力)、藤本拓(トヨタ自動車)、河合代二(トーエネック)、設楽悠太(Honda)、山本浩之(コニカミノルタ)らに対しても、水面下で日本選手権1万mの出場辞退を促している可能性は捨てきれない。 大迫は日本陸連の強化指定選手であり、東京五輪の星といえる選手。日本陸連が普段から有力選手と密にコミュニケーションを取っていれば、こういう事態にはならなかったのではないだろうか。ツイッターでも伝えているが、大迫は出場を断られたことに立腹しているわけではなく、その理由、やりとりについて問題提起している。 本来ならばメディアが指摘しなければいけないことだが、大迫は現役の選手で実績も十分にある。彼の言葉は重い。日本陸連は現役のトップ選手に“このように思われている”という自覚を持ち、行動を改めないといけないだろう。 スポーツ連盟・協会はどんな役割を果たすべきなのか。自分たちのミッションを明確にして、スポーツマンらしく、正々堂々と活動していただきたい。 (文責・酒井政人/スポーツライター)