カオスだった年末年始のプロレス界 2025年の日本マット界は予測不能
【柴田惣一のプロレス現在過去未来】
プロレスはキャリアのスポーツ。語り継がれてきた定説だが、現代においてはもはや当てはまらないのかも知れない。 【動画】「清宮アレルギー」が止まらない!OZAWAが憎悪と狂気の公開暴露!! 2025年の幕開けから衝撃的なシーンを見せつけられた。ノアの元日決戦(1・1日本武道館)で、暴露王・OZAWAが清宮海斗からノアの至宝・GHCヘビー級王座を奪い取った。 22年9月にデビューし、24年初めから海外遠征。24年10月に凱旋帰国したが、練習中にケガを負い欠場。元旦決戦は久しぶりの実戦だった。キャリアは2年あまり。清宮もキャリア3年で戴冠し、驚異のスピード出世と騒がれたが、OZAWAはあっさりと新記録を達成した。 清宮は入門直後から将来のエースと期待され、正統派エースの道を歩んだ上での栄冠だった。 OZAWAは暴露王の異名通り、3度目の王座でノアをリードする清宮の私生活を暴き立てた。対戦相手を “口撃” するのは当たり前だが、新たなやり口にファンも驚き、ざわついたのは事実である。 果たして、OZAWAは見事に清宮からピンフォール勝ち。抜群の運動能力をフル活用したファイトはあっぱれだった。 しかも日本武道館に詰め掛けたファンのハートをしっかりとつかみ取っていた。王者の清宮に声援が集中するかと思いきや、ブーイングを浴びたのは清宮だった。清宮が気の毒になるほどファンはOZAWAの支持に回っていた。 OZAWAはファイトに加えて、発信力に長けている。かつての “理不尽大王” 冬木弘道、“200%男” 安生洋二、そして新日本プロレスを支える “制御不能” 内藤哲也に近いものがある。 それどころかマイクを得意とする先輩たちさえ、手をいや口を出さなかったプライベートにまで踏み込んでいくのだから、対戦相手に心理戦で上回り、新時代を切り開いたと言っていい。 もちろんベルトは守る方が奪うよりもはるかに難しい。これから王者としてOZAWAは真価が問われるが、どんな口八丁手八丁を披露してくれるのか、楽しみは膨らむ。 昨年24年のフィナーレも驚きだった。全日本プロレス大晦日決戦(12・31東京・代々木大会)で斉藤兄弟の兄ジュンが三冠王者デイビーボーイ・スミスJrを下し五冠王に輝いた。 斉藤ジュンは1・3後楽園ホール大会で弟レイと世界タッグ王座も防衛。大相撲出身者とはいえ、21年6月デビューのキャリア4年で、五冠王として全日本プロレスを制覇した。 新日本プロレスでは1・4東京ドーム大会で、逆風にさらされていた海野翔太がIWGP世界ヘビー級王座に挑戦。王者ザック・セイバーJrの執拗な攻めを耐え、とことん追い詰める激闘だった。ベルトに手は届かなかったものの、ブーイングは徐々に声援へと変わっていった。キャリア7年にしての東京ドームのメインイベント出陣はあっぱれだろう。 翌1・5東京ドーム大会でクラウディオ・カスタニョーリを下した海野へのファンのスタンスは確実に違っていた。何十年かして海野のレスラー人生を振り返る時、初の東京ドーム・メインイベントの一戦は大きな分岐点となっているはず。 昭和のプロレス界では「10年は修行」というのが定説だった。ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、中邑真輔、安齊勇馬などすぐにスターに昇り詰めた逸材もいるが、大半の選手は前座、中堅…ステップを踏んでいる。 もちろん本人の努力、精進は欠かせないが、時代の風に上手く乗るのも重要だろう。デビュー後、時間をかけずしてトップに立てるとなれば、他分野スポーツからスター選手が転向することも増えるかも知れない。 いずれにせよ、カオスで始まった今年のプロレス界。何が起こるのか、予測不可能。いよいよ目が離せない。(文中敬称略) <写真提供:プロレスリング・ノア>
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