子どもの不登校で増える親の退職・休職…NPO代表の訴え「親は自分を責めないで」
ある日突然、子どもが不登校になると、親の生活はガラリと変わります。現実を受け入れきれないまま、子どものメンタルケア、学校やスクールカウンセラーとの連絡、専門支援機関のリサーチ、生活面でのケアなど、さまざまな役割を担うことになります。仕事の調整による金銭面での変化も発生します。先が見えない不安や世間からの心ない偏見も、親の心を疲弊させていきます。 【漫画】男子高生が「5年の不登校」から抜け出せた本当の理由(おがたちえ) 不登校親子の支援を行なうNPO法人キーデザインが2020年5月に立ち上げた、不登校児の親向けLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」には、全国から年間300件以上の相談が寄せられるといいます。「お母さんのほけんしつ」から見えてくる、不登校児の母父が抱える苦悩とは?
子どもの不登校で追いつめられる親たち
NPO法人キーデザイン代表理事の土橋優平氏が、不登校に悩む親のためのLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」を開設したのは、ある母親のさりげない言動がきっかけでした。 「フリースクールを始めて間もない頃、あるお母さんが迎えに来てくださった時に、すごく嬉しそうにしていました。聞けば、久しぶりにマッサージへ行ったとのこと。その時、子どもが学校へ行かなくなってから、自分のために時間を使うことが、長らくなかったのだろうと思ったんです」 それまでにも、フリースクールで保護者からの問い合わせ対応をする中で、不登校児の親たちが追い詰められ、精神的に辛い状況にある様子を多く見てきたといいます。 「対面でお話をするとき、みなさん涙をボロボロと流し、ハンカチで目を押さえながら、これまでの経緯を話されます。子どもが学校に行ってほしいと親がどれだけ願っても、叶わないし、元気になって欲しいと思っても、子どもは落ち込んだまま。誰にも理解されない孤独な環境の中で頑張ってこられたことが、涙の背景にあるのでしょう。 こんなにも、不登校の親子を苦しめてしまう今の社会はなんだろう?という悔しい思いがありました。何か親御さん向けの支援をできないかと考え、保護者のための無料相談窓口を、LINEで開設することにしました」 2020年5月に開設したLINEの無料相談窓口「お母さんのほけんしつ」は、予算をかけて広報をしなかったにも関わらず、登録者は10 日で 100 名を超えました。 当初は土橋氏が一人で対応し、昼間はフリースクールを運営する傍ら、夕方から5~ 6 時間かけて、毎日15人ほどの相談に乗ったといいます。 開設から3年が経過し、現在はボランティアのスタッフも含めた4人体制で、常時50人ほどの親とやり取りをしています。登録者数は、約3,500人(2024年2月時点)です。