屋比久知奈、約7年ぶりのモアナ役でも「自然とリンク」 “作り込みすぎない”役作りを語る
■屋比久を支えた「母の教え」
屋比久:そうですね。ワンテイクで終わらせてみたかったんですけど(笑)。ただ、今回は収録だからこそできるいろいろな表現を歌唱監督さんと試してみました。アウリィ・クラヴァーリョさんが歌うオリジナルの楽曲に忠実でありつつ、日本語でわたしが歌うからこそできることを探りながら。一方でイベントなど生で歌う時はある意味ワンテイクのようなものなので、その時にできる表現もあるんじゃないかなと思っています。きっと音源とは異なる表現ができるので、そういった違いも楽しんでいただけたらうれしいです。 ――ちなみに『モアナと伝説の海2』で印象的だったセリフはありますか? 屋比久:「道は1つじゃない。必ず別の道がある」とモアナが言われるセリフです。この3年間、いろんな海を旅して、さまざまな経験をしてきたからこそ、今のモアナは「こうしなきゃ」や「こうありたい」という思いを持っていて、そのために仲間に頼れない瞬間も出てくるんです。そんな時にふっと入ってきたこの言葉に「確かに」と思いました。ここまでいろいろな可能性や道を選んできた中で、今立っている場所にたどり着くまでの自分の行動に間違っていたものはないし、仲間を信じたからこそ見えてくる道もある。そんな経験はわたしの中にもあったので、世界が広がるセリフだったと思います。 ――今回のモアナは仲間とともに「かつて人々は海でつながっていたが、人間を憎む神に引き裂かれてしまった」という呪いを解くために海へ出ます。高校時代にアメリカ留学を経験したり、沖縄から上京したりと、屋比久さんも海を越えた挑戦を経験されていますが、その時の原動力はなんだったのでしょうか? 屋比久:バレエの先生をしていた母に「人には頑張る時があって、努力は絶対に裏切らない。努力する時に頑張ることが大事だよ」と教えられてきました。頑張ってきたことは必ず何かの形で返ってきて、結果は関係なく、努力自体が自信や糧につながります。舞台に出演する際も、稽古をして1歩ずつ階段を上ってきたという事実が、わたしを支えてくれるんです。留学の時の英語の勉強のように、1歩踏み出していく上での準備や努力が自分の中に必要だなと、いろいろなお仕事をさせていただく中でもすごく感じています。挑戦の過程と支えてくれる大切な人たちの存在がわたしにとっての原動力です。 ――モアナや屋比久さんの背中を見て育つ、小さなプリンセスがたくさん生まれそうですね。 屋比久:『モアナと伝説の海2』は前作同様、勇気と元気をもらえる作品になっています。見る人の世代は関係なく、完ぺきな人はいないし、悩みを抱えているし、挑戦するのは怖い。でも葛藤がなかったら、何も生まれない気もするので、迷いを乗り越えて踏み出す1歩というのがものすごく大切で、そこから見えてくる何かがあることを教えてくれるのが本作なんです。仲間や家族がいて、大切なものがあれば、そのために頑張れる。そんな温かくて優しいメッセージが込められています。子どもたちはもちろん、この作品を見たいろんな人に、自分を信じて前に進むこと自体が大切だということを感じ取っていただけるとうれしいです。結果は必ず後からついてくると思います! (取材・文・写真:阿部桜子) アニメーション映画『モアナと伝説の海2』は全国公開中。