予算案の賛否、「教育無償化」実現次第 対自民、国民民主と共闘も―維新・前原共同代表【解説委員室から】
日本維新の会の前原誠司共同代表は時事通信のインタビューに応じ、教育無償化を巡り、自民、公明両党の対応次第で来年度予算案の賛否を判断する考えを示した。予算案賛成の可能性に含みを残したが、その場合、党内や世論の納得が必要との見解も表明した。企業・団体献金の扱いについては、野党共闘で禁止法案を衆院で通すべきだと強調した。主なやりとりは次の通り。(時事通信解説委員 村田純一、政治部 眞田和宏) 【図解】政党支持率の推移 ◆是々非々のスタンスは変わらない ―維新の共同代表になって自民に対決姿勢を示していたが、24年度補正予算案に賛成したのはなぜか? 教育無償化で自公との協議体をつくったからか? ▽12月1日に維新の新代表に吉村洋文さん(大阪府知事)が決まったが、前日に共同代表を打診されていた。「本当に私でいいんですか」と言ったが、国土交通相の時の関西国際空港・伊丹空港の統合、コンセッション(運営権売却)などを含め改革の姿勢が評価され、「他の党役員は若い人たちを幹部に指名するので、ぜひ取りまとめをしてほしい」と言われ、私の役割かと思った。 私は、共同代表に指名される前、国民民主の立ち位置がいいと思っていた。馬場伸幸代表の時は、政治改革に対する自民党の約束不履行があって、自公には協力しないことになった。その気持ちはよく分かる。 維新の立ち位置をどこに定めるか、吉村さんはどういう考えか、私は関心を持っていた。吉村さんと話す中で、自公が衆院で過半数割れしている状況で、「何でも反対、協力しないというよりは、政策テーマをぶつけて、勝ち取れるものがあれば、勝ち取ればいい」という発言があり、これは私と一緒だという思いを持った。 吉村さんは代表選の時、「高校教育の無償化」を主張していた。私は(もともと)教育全体の無償化を大事にしてきた政党にいたので、まずは教育の無償化を自公との協議に乗せて、政策実現のために取り組もうと腹合わせをし、その次の弾込めとして、社会保険料の引き下げを目指す会議体をつくっている。吉村共同代表も同じ思いを持っていたので、二人の間に齟齬(そご)はない。 ―自公と連立という選択肢はなく、是々非々のスタンスは変わらないということか? ▽変わらない。 ◆「103万円の壁」引き上げ邪魔しない ―教育無償化の中では、所得制限なしの高校授業料の無償化が最優先か? ▽吉村代表が一番こだわっていたところで、これを特出しして、来年度からの実施を求めている。財源さえあれば0~2歳(保育)や学校給食の無償化もそんなに難しい話ではない。2026年度から実施してもらいたいと思う。高等教育の1人目からの無償化もしっかりとやってもらいたい。奨学金の返済免除はワンショットで、財源も提案している。日銀の持っているETF(上場投資信託、時価ベースの保有額70兆円)を使えばいい。こうしたパッケージについて結論を得ることで自公との協議体をスタートさせている。 ―自民党は来年度予算成立のために、維新(の教育無償化)と、国民民主(の「年収103万円の壁」引き上げ)を「両てんびん」にかけていると指摘され、国民民主は維新の自民への接近に反発しているようだが? ▽われわれは「年収103万円の壁」引き上げには賛成なので、ここまで国民民主が努力されてきたことに最大限の敬意を表したいし、邪魔をするつもりは全くない。両てんびんにかけられているなら、年収の壁引き上げと教育の無償化で共闘したらいいと思っている。そこはぜひ誤解なきようお願いしたい。 ◆予算案賛成には世論、党内の納得感が必要 ―来年度予算案への賛否だが、教育の無償化が必要条件と言っているが? ▽教育無償化で協議体をつくり、高校の無償化は来年度からということだが、0~2歳、学校給食の無償化、高等教育の1人目からの無償化、奨学金の返済免除、これをパッケージにして、自公がどうとらえてくるか。われわれは紙で約束されても、意味がないと思っている。(実現の手順や日程などを規定した)プログラム法案のようなものを固めて、誰が首相になろうが、国会で議決したら自動的に動きだすような法律をつくりたいと思っている。かつ社会保険料の引き下げは「第2の矢」だ。最終的には、教育の無償化やわれわれの要求に、どれだけ誠意ある対応があるかどうかが賛否の基準になる。 ―予算案賛成もあり得るか? ▽予算案に賛成する必要条件は、教育の無償化について、われわれが提起していることに対する真摯(しんし)な対応だと言ってきた。来年の通常国会冒頭の代表質問に対して、どれだけ誠意ある対応が行われるかを総合的に判断して賛否を判断する。 ―自民党に対する要求はハードルが高いと思うが、必要十分条件に達するハードルはどのようなものか? ▽党内の納得感が必要だ。来年は参院選がある。党内の納得感をつくるのは国民の世論だ。世論が、(与党との協議で)ここまでやってくれたなら、維新は(予算案に)賛成すべきだとなるのか。この程度で賛成するのかと国民が受け取るのか。国民の判断、意識は大変大きいと思う。具体的に何かを勝ち取らなければ、国民も判断できない。この程度で賛成するのかという世論の雰囲気になれば、当然、党内も反対が多くなるだろう。 別に連立入りするわけではないし、参院選では(自民と)戦う。少数与党でもここまで聞いてくれ、賛成してもわれわれの大義が成り立つという世論になれば、党内もそういうことになるだろう。そこはこれからの話し合い次第で、おそらく国民民主党も同じだと思う。 われわれが思っていたことと全然話にならないということになれば、不信任決議案について当然賛成する可能性もある。「目指す」というだけでは駄目だ。成果物をしっかりと目の前に見せてもらわないといけない。