電動キックボードの日常化が生むマナー問題、LUUPが警察連携とGPS監視で対応へ、全国1万拠点の成長がかかる安全対策
■根強いマナー問題への厳格な姿勢 一方で急速な普及に伴う課題も浮き彫りになってきた。SNSでは歩道走行や危険な運転を指摘する声も少なくない。 「実は、ルールを守って利用している方々から『マナーの悪い人のせいで全体のイメージが悪くなる』という声を多くいただきます」と岡井氏。今回のCMキャラクターに起用された二宮和也も「4~5台の真面目な利用者の中に1台、悪目立ちしている人がいる印象」と指摘する。 同社は対策として、利用開始時の本人確認や交通ルールテストの全問正解を義務付けている。全車両にGPSを搭載し、不適切な駐車も監視。対人・対物・自損の保険も完備する。
電動キックボードが特定小型原動機付自転車として免許不要で乗れるようになったことで、新規ユーザーの裾野は大きく広がった。事業拡大フェーズに入った今、岡井氏は「より厳格な運営が必要」と判断。違反者への対応も強化する方針だ。「軽微な違反であっても、警察と連携してユーザーを特定し、必要に応じてアカウントの凍結も実施していく」と強調した。 技術面での対策も進められている。GPSの精度が向上すれば、歩道走行などの違反を自動検知し、強制的に速度制限をかけることも可能だ。すでに内閣府と実証実験を始めているが、現状では精度やコストの面で課題が残る。「足元では人的な取り締まりを強化しつつ、新技術の開発も並行して進めていく」と岡井氏は説明する。
■「街じゅう駅前化」への展望 岡井氏が掲げるビジョンは「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」こと。日本の都市は高度経済成長期に鉄道網が整備され、駅前に街が形成されてきた特徴がある。その結果、駅から離れた場所の不動産価値は相対的に低く、都市機能も駅前に集中しがちだ。LUUPはこの構造を変えようとしている。駅から離れた古くからある商店街や、魅力的な店舗へのアクセスを改善することで、都市の新しい回遊性を生み出す狙いだ。