電動キックボードの日常化が生むマナー問題、LUUPが警察連携とGPS監視で対応へ、全国1万拠点の成長がかかる安全対策
同社は政府や自治体との対話を重ね、安全な規制のあり方を探るため、沖縄から北海道まで数十回にわたる実証実験を実施した。その結果として、2022年4月に改正道路交通法が公布。電動キックボードなどを対象とした「特定小型原動機付自転車」という新たな車両区分が設けられ、2023年7月から施行された。新制度では最高速度が20キロメートル毎時以下に制限される一方で、16歳以上であれば免許不要で運転可能となった。
同社が電動キックボードの導入にこだわった背景には、将来を見据えた戦略的判断がある。現在、車両は電動キックボードと電動アシスト自転車が半々の比率で展開されているが、電動キックボードには独自の優位性があるという。GPSの精度向上により、歩道走行の自動検知や速度制限など、技術的な制御が可能だ。また、構造がシンプルなため耐久性が高く、シェアリング事業の採算性にも優れている。 サービス開始から4年。LUUPの車両の貸出・返却場所となるポートは、全国1万箇所にまで成長した。このうち、約半数が東京に集中する。都内では大手コンビニ3社の全店舗数を上回るポート数を展開している恰好で、他社を圧倒している。
同社はなぜここまでポートを拡大できたのか。強みについて岡井氏は2つの特徴を挙げた。 1つは独自開発の予約システムだ。「目的地を必ず予約しなければいけない機能を、世界のシェアサイクル企業の中で唯一持っています」と岡井氏。LUUPのシステムでは乗車時に目的地のポートに空きがあるか確認してから乗車する仕組みとなっているが、これにより各ポートの収容台数を厳密に管理できる。既存のシェアサイクルでは10台と決められた場所に20~30台が集中することもあるが、同社のシステムではそうした問題を防げるのだ。
さらに、ポートの多さ自体が新規設置の追い風となっている。岡井氏は「例えば北参道駅のような場所のコンペがあるとき、シェアサイクル事業者が複数手を挙げても、基本的に弊社が選ばれます。渋谷方面に行きたい入居者のために、マンションやオフィスのオーナーは、そのエリアにポートを持つ弊社を選びます」と説明する。 興味深いのは、ポート数の増加が利用頻度の向上にもつながっている点だ。「当初は『ステーション数が増えると一台あたりの利用が減るのでは』という懸念もありました。しかし実際は、自宅の近くにもオフィス近くにもポートがあることで、2回だった利用が毎日の利用に変わるなど、むしろ頻度は上がっています」(同氏)。