広島に残る黒田遺産と黒田ロスの問題
広島カープは5日、広島市内で約31万人の大観衆に見守られる中、41年ぶりとなる優勝パレートを行い、続いて、マツダスタジアムでは、優勝報告会が開かれ、今季限りで現役引退を決めた黒田博樹(41)が引退セレモニーでファンに別れを告げた。 「笑顔や涙、色々なものを見せてもらい、感動しています。苦しい20年間でした。ただ、苦しいことを乗り越えて、こういうパレードができた。アメリカに渡った時に、まさかマツダスタジアムのマウンドに立てると思ってなかったので、不思議な気持ちです。最後に世界一のカープファンの前で、ユニホームを脱ぐことができます。本当に最高の引き際になったと思います」 ファンにそう挨拶をした黒田は、新井の発案で胴上げされ、永久欠番となることが発表された背番号「15」にちなんで、15回、宙に舞った。黒田はそのままマウンドに残ると、右ひざをつき、長い時間うつむき涙を流した。野球の神様への20年間のお礼だったという。 広島でコーチ経験もある巨人OBで元ヤクルト、西武監督の広岡達朗氏は、黒田の清い引き際を讃えた。 「黒田は、素晴らしい引退を決めた。自分の力を勘違いして、金やいろんなものに執着して、なかなかユニホームを脱げない選手が多いが、黒田は、清い引き際を選んだ。聞くところによると、41歳の体はボロボロ だったという。まだやれるのかもしれないが、黒田なりの美学というか、プロとは何かを貫いた結果だと思う。金、金、金の今のプロ野球で、それよりもっと重要なものがあるという価値観を黒田は見せてくれた」 広岡氏は引退する黒田がチームに残した遺産が大きいと見ている。 「黒田がこの2年間で、チームに残した遺産ははかりしれない。まずマウンドに上がるまでの準備、中4日でも、中5日でも、チームのために投げるんだというチームを最優先に考える哲学、打者に向かっていく姿勢、たとえ相手が若い選手であろうが、ベンチにいるときから、“舐められた終わり”“戦うんだ”というプロとして大切なオーラを出していた。 合同自主トレや侍ジャパンで仲のいい選手が増え、馴れ合いの雰囲気が出ているグラウンドに黒田は緊張感を持ち込んだ。またツーシームを駆使して、内角球が、いかに大事かを若い投手に教えた。野村の1本立ちやストッパーの中崎の成功には黒田の影響が大きいと思う」