広島に残る黒田遺産と黒田ロスの問題
プロとしてのあるべき姿と、技術的にも内角球の使い方など、自らが手本となりながら広島の若手投手陣に残した“黒田遺産”。それらは、連覇を狙うチームの土台となることは間違いないが、その一方で、今季24試合に先発、151回3分の2を投げて10勝8敗、防御率3.09を残した黒田の穴をどう埋めるか、という“黒田ロス”の問題が残る。 日本シリーズを見ても明らかだったが、クリス・ジョンソン(32)を中4日で起用せねばならないほど、野村祐輔(27)、黒田に次ぐ、4人目、5人目の先発に苦労していた。 日本シリーズでは、ルーキーの岡田明丈(23)が4番手で起用されが、長いシーズンを考えると6人の先発をそろえておかねばならない。今のところ黒田抜きで先発候補の名前を挙げるとすれば、野村、ジョンソン、岡田に、大瀬良大地(25)、福井優也(28)、薮田和樹(24)、戸田隆矢(23)、九里亜蓮(25)、今季は主に中継ぎで起用され残留が決定的なブレイディン・ヘーゲンズ投手(26)らとなるが、すべて期待値込みの面子で、現段階で計算できるのはジョンソン、野村の2人だけだ。 ドラフトでは“黒田ロス”を埋めようと、即戦力の創価大・田中正義を1位指名、くじを外すと桜美林大の佐々木千隼を指名、さらに外すと、慶応大の加藤拓也を指名した。最速153キロの右腕で、田中、佐々木に比べると即戦力度は落ちるが、ローテーション争いに加わってくることを期待しての指名である。 だが、「ルーキーはよほどの選手でない限り計算できない」が球界のセオリー。今季は、前田健太(28)の抜けた15勝の穴をチーム全体で見事に埋めて見せたが、チームに残る黒田遺産と、黒田ロスの問題。来季はどちらがクローズアップされることになるのだろうか。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)