小売DXで拡大するRFIDの役割--ファストリやクローガーも導入のAvery Dennisonに聞く
Avery Dennisonの優位性について、加藤氏は「世界50カ国以上の拠点を生かした供給体制」「約100種類に上るRFIDタグの提案」などを挙げた上で、「当社の優位性は、RFIDソリューションの導入における障壁と表裏一体にある」と語る。RFIDタグの平均単価は低下傾向にあるが、RFIDソリューションの導入には依然として膨大な費用がかかる。こうした中、同社は顧客との取り組みで得た知見を基に、RFIDの活用方法や重要業績評価指数(KPI)の設定を提案する。 人手不足に悩む日本企業では、RFIDソリューションに対する代表的なニーズとして「入荷検品や棚卸しの業務効率化」がある。しかし、一つ一つの商品にRFIDタグを取り付けるコストを考慮すると、投資利益率(ROI)が低いケースもあるという。 一部の企業では大手企業の導入事例などを見て、RFIDソリューションの導入が目的となってしまうこともあるという。これに対し、Avery Dennisonは在庫データの精度を定量化して課題の本質を見極め、「解決策はRFIDではない」と伝えることもあるそうだ。 その上で同社は、入荷検品や棚卸しの業務へのRFID活用を希望する企業に対し、実店舗での欠品防止やトレーサビリティーの強化によるブランド価値の強化など、売上高の向上につながる取り組みに転換することを提案している。 「自社に適したRFIDソリューション」を探せるラボ Avery Dennisonは、顧客企業とのディスカッションの場として、東京都港区虎ノ門の同社拠点にラボ「Toranomon Lab.」を併設している。同ラボにおいて企業は、担当者と議論しながら、自社の業務改善に適したAvery Dennisonやパートナー企業のRFIDソリューションを探すことができる。2022年に開設し、毎月10社ほどの既存/潜在顧客が訪れているという。 同ラボには、さまざまなハードウェア/ソフトウェアを展示している。取材時のデモンストレーションでは、RFIDリーダーがAvery DennisonのRFIDタグが付与された商品の情報を捉え、1.7秒ほどで全ての箱に入った商品情報を読み取った。カートの両サイドに設置のアンテナから送られた電波を各RFIDタグが電力に変換し、RFIDリーダーに情報を伝える仕組みとなっている。 ラボでは、複数種類のRFIDタグを一度に検証することも可能だ。読み取り速度はタグの種類や付ける素材によって異なり、企業は自社の商材に合ったものを選択する必要がある。幅広い商材を取り扱う企業は、複数種類のタグを使い分ける。 ラボでは自社のRFIDタグ、Avery Dennisonの従業員が世界各地から収集したタグ付属の製品を展示している。RFIDタグの「付け方」も商材や企業のスタンスによって異なり、アイブロウなどの化粧品には細い形状のタグを貼り付けたり、消費者からの見え方を気にする企業では商品付属の冊子にタグを埋め込んだりしている。アパレル企業などでは、裏側に柔らかい素材のタグを縫い込むことで、万引の防止を図っている。