仮設店舗で念願の再出発 珠洲の被災4店、合同で食堂オープン
●福幸(ふっこう)丼を提供 「ここがスタート」 能登半島地震で甚大な被害を受けた珠洲市の飲食業4店が6日、同市野々江町の「道の駅すずなり」敷地内に建てられた仮設店舗で、飲食店「すずなり食堂」をオープンさせた。隣接する弁当店とともに、市内で初めてとなる仮設店舗の営業開始で、多くの人が能登の魚介を使った看板メニューの「福幸(ふっこう)丼」などに舌鼓を打った。地震でなりわいを失った4店の主人たちは、にぎわう店内を眺め、再起を誓った。 【写真】「道の駅すずなり」の敷地内にオープンした「すずなり食堂」=6日午前11時40分 すずなり食堂と隣の弁当店は、地震前に市内で営業していた「グリル瀬戸」「レストラン浜中」「庄屋の館」「典座(てんぞ)」の4店で設立した「合同会社すずキッチン」が運営する。食堂は9月は無休で、午前11時~午後2時半に営業する。9月中旬以降は夜の営業も始める予定。 4店はこれまで、市内の避難所に届ける弁当作りを手掛けていた。5月には東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の仮設商店街を訪ねるなどし、準備を進めてきた。福幸丼には、能登の魚介に加え、南三陸町のサーモンも入れた。 仮設店舗は約270平方メートルの平屋で、中小企業基盤整備機構の補助金を活用して珠洲市が建設。原則無償で入居でき、光熱費や内装費などは事業者が負担する。開店より一足早く、4日には石川県などの復興応援モニターツアーに参加した首都圏の33人を福幸丼でもてなした。 合同会社の代表で、典座を営んでいた坂本信子さん(55)は「今まで長かったが、ここがやっとスタート。自分たちの暮らしを取り戻し、珠洲の観光や生活が元に戻るようにしたい」と再出発へ意気込んだ。同市若山町の仮設住宅に住む竹林ふじ子さん(69)は金沢から迎えに来た長女とテーブルを囲み、「温かい食事がとりたかった。娘と食べると料理がおいしい」と喜んだ。 珠洲市では正院町正院でも仮設店舗の整備を進めており、理髪店など4店舗が入居する予定となっている。