第4の映画流通「DVT」とは? 所有者はリセール、レンタルなど“3つの権利”を持つことができる!? 専門家が解説
◆黒沢清監督作品が数量限定で販売中
吉田:このDVTの形式で、すでに映画が販売されているのですか? 塚越:Roadsteadでは、4月にオリジナル作品として黒沢清監督の短編映画「Chime(チャイム)」を販売しています。黒沢監督は「CURE(キュア)」「トウキョウソナタ」「スパイの妻」などで知られる世界的に有名な監督です。 今回販売されている「チャイム」という作品は、2月にベルリン国際映画祭で上映されましたが一般公開はされていません。おもしろいのは、この作品を買えるのは999人までに限定されていて、価格は1万4,850円(99USドル)。購入制限があるので、人気が出ればリセール価格が高騰して、それが制作陣にも収益として還元される可能性があります。 これまで、DVDなどは販売された後は転売されても制作陣は何も受け取れなかったわけですが、プラットフォームで管理することで収益化できるということです。 ユージ:面白いですね。 吉田:映画館が個人になったみたいですね。
◆「DVT」が生まれた3つの理由は?
ユージ:レア感もあっていいですよね。この「DVT」の登場には、どういった背景があるのでしょうか? 塚越:背景として日経MJは、映画業界の3つの環境変化を指摘しています。 1つ目は「売れる作品」が偏るということ。日本映画製作者連盟によれば、映画館のスクリーン数に占める「シネコン」の割合は、2000年の4割から、2023年は9割まで高くなっています。シネコンは一般的に大資本でつくられた作品を上映しますが、一方で小規模な「ミニシアター」が衰退していて、個性的な作品は出づらい状況です。今回のDVTはその受け皿という意味があります。 2つ目は動画配信サービスの不公平感。調査会社GEM Partnersによれば、去年の動画配信の国内市場規模は5,740億円。4年間で倍増しています。ただ、動画配信では現状、再生数に応じた報酬などがもらえないので、制作陣は不満があります。 去年アメリカの脚本家や俳優がストライキをして交渉して、ある程度権利を確保しました。日本政府もこの流れをみて4月17日に取引慣行の実態を調査し、新しいビジネスモデルを構築するとしていて、今回の取り組みは先行事例になる可能性があるかなと思います。 3つ目は「海賊版の被害」です。コンテンツ海外流通促進機構によれば、日本の海賊版被害は2022年でおよそ9,000億~1兆4,000億円。2019年から6倍に増えています。被害も大きいということで、Roadsteadはブロックチェーン(※仮想通貨など金融取引履歴などで利用される技術)を利用して所有者を明確にし、スクリーンショットや画面共有もできない仕組みにしています。これは海賊版対策という意味もあります。