「今もやれることを一生懸命」音楽通じ3.11被災地応援 ── 山口洋・矢井田瞳。福島への想い
みんな役に立ちたいと思ってる
──相馬の民謡を演奏されたこともあったとか(「新・相馬盆歌」として2013年の夏に相馬で演奏) 山口洋 遠藤ミチロウさん(プロジェクトFUKUSHIMA!)から手を貸してほしいと言われて。でも、相馬の民謡なのにおじいちゃんおばあちゃん踊ってくれなかった(笑) 矢井田瞳 ミチロウさん、洋さん、チャボさんの3人で演奏されたのを見たんですけど、すごい迫力だった。あ、今すごいもん見てるってわかるんだけど、はぁぁーって、アーヨーとはならない(笑) 山口洋 なんか脅迫? 恫喝?(笑) 矢井田瞳 同じリズムがずーーっと続くと人間高揚していきますよね。 山口洋 リアクションは気にしないっていうか、千差万別でいいと思う。正しいと思っていて好きと思ったことを一生懸命やるでいい。そのOKテイクは25分くらいになってアナログ盤にしたら片面全部1曲みたいな(笑) ──表には出なくても、おじいちゃんおばあちゃんも何か感じてくれてたはずですよ。今後ですが、リニューアルを考えていらっしゃると……。 山口洋 昨年末から函館の食材と愛媛のみかんを合わせた「八味」(商品名は「WILD SIDE」)を販売し始めたんですけど、一生懸命作っても農協に納めるだけだったみかんが震災の復興のために使われる。みかん農家の人たちにとっても、生きてる実感が得られたのが嬉しいです。人が生きていられるのは自分の仕事とか思いとかが社会の中でどのように機能しているかの実感だと思う。そういうふうに還流させていく役目が音楽にあったりして…… 矢井田瞳 私、洋さんにもらった大切な感情とか考え方とかいっぱいあって。わりとデビューしてしばらくは「仕事・音楽・生活・人間関係」ってバラバラだったんです。その方が楽だったんです。でもそれやと、一つ一つつじつまが合わなくなってどんどんどんどん苦しくなっていって息が詰まったときくらいに洋さんに出会って……それからはその4つがどんどん全部一緒のことなんだなっていうふうにぐるぐる回ってて。全部一緒の方が楽。血流がいいです。問題が起きたときもちゃんとたぐれば元が見えるというか…… 山口洋 程度の違いはあってもみんな役に立ちたいと思ってるんですよ。ただ現代はその余裕がなくて。だから僕みたいな寅さんみたいな人間がそれを率先していて、へらへら笑いながらこんなことやってるくらいの感じがいいんじゃないかと。もう100回くらいやめようと思ったんですけど、そのたびに誰かが僕を助けてくれる。今や全国にそういう仲間たちがいる。全国から風を受けている。一次産業に限ったことではないですが、いい物をつくっているのに気持ちが孤立している人たちの気持ちを束ねて、僕らがその受け皿になって、福島のためになるようにする。そのために、ヤイコちゃんや仲間と相談してもっとわかりやすい形にリニューアルしていきたいと。どういう言葉で伝えればいいのか。「FOOD」(食べ物)っていうアクションがあって、「MUSIC」ってアクションがあって、「LIFE」っていうアクションがあって、「LIFE」のところが福島とつながっている。何のためにお金が使われて、どんな成果が出ているのかをもっとわかりやすく伝えたい。こうしたから福島がこう良くなってきたとちゃんと見えるように。全国を回って会って話を聞いて、お会いした人たちの意見やアイデアを交合して、うまく変えていけたらいいなと。 矢井田瞳 実際に会って一人ひとりの話を聞くっていうのはすごいパワーいると思う。 山口洋 うん、ときには切れたりね?(笑)でも僕らは最終的には音楽に昇華することができるから。今を生きている人たちの不満っていうのはネガティブなことだけど、それをポジティブに変えることが僕らの仕事。受けすぎると熱が出たりするんですけどね、でもそうしないと同時代の闇が見えてこない。