【箱根駅伝】中大は往路2位「来年も走っちゃいますか?」芦ノ湖に響く声、前回の雪辱果たす快走
<第101回箱根駅伝>◇2025年1月2日◇往路◇東京-箱根(5区間107・5キロ) 【動くグラフ】箱根駅伝・復路の順位変動 中央大が往路2位となる5時間21分48秒と健闘した。 1区の吉居駿恭(3年)が22年大会で同区間の区間新記録を樹立した2学年上の兄大和(現トヨタ自動車)に続き、兄弟で区間賞を獲得。5区中盤まで首位を走り続け、前評判が高かった国学院大や駒大に先着した。 1年前は大会直前に感染症が拡大した影響で13位。昨年10月の予選会を勝ち上がり、本大会でその雪辱を果たす快走を見せた。史上最多14度の総合優勝を誇る古豪が、往路優勝した青学大と1分47秒差で3日の復路に臨む。 ◇ ◇ ◇ 大手町にスタートの号砲が響き、集団が500メートルほど進んだところ。吉居がすっと前へ出た。迷うことなく、20人のランナーを引き離していく。藤原正和監督からは18キロ付近の六郷橋以降で仕掛けるように指示されていたが「誰も反応しない。行ってしまおう」と攻めた。 そのまま独走し、1時間1分7秒で区間賞。2位に1分32秒差をつけた。「駅伝は流れが大事」と使命感があった。 チームにつながりをもたらしたかった。吉居は先月中旬に1区出走が決まると、3年前に区間記録を打ち立てた大和のレース動画を4回ほど視聴。初出走となる1区のイメージを焼き付けた。 ただそれは「兄の記録を超える」という思いからではなく、チームのためだった。中大は前回大会で1区区間19位と出遅れただけに「次の選手に先頭を走る楽しさや気持ち良さを感じてほしい」と後続へつなぐ意識があった。 つなぐ-。 その思いは、5区の園木大斗(4年)にも共通していた。本来であれば昨年度で卒業するはずだったが、故障続きで納得のいく走りができず、藤原監督から「もう1年、目指してみないか」と諭されたことで今季も在籍。チームの方針で週3~4回のジョグの距離が前年から約3キロ増の15キロへ伸び、1人での練習機会も増えた。「泣きそう」と孤独を感じる日もあったが、毎朝5時半にはグラウンドへ向かった。 1年前は大会直前にエントリー16人のうち14人が発熱やせきを発症。園木も10区を走る予定だったが、体調不良で出走できなかった。優勝候補に挙げられながら6区間で2桁順位となり、まさかの13位に終わった責任も感じていた。 「今年も同じことを繰り返してはいけない」 この日の5区では中盤で青学大に逆転されたが、そこから粘る。区間6位でまとめ、復路へつないだ。 ゴール地点の芦ノ湖には、チームメートの声が響いていた。 「よく走ったよ。来年も走っちゃいますか?」 園木は日ごろ「ソノキング」から派生した「キング」という愛称で、下級生から親しまれている。「後輩たちは壁を感じさせずに接してくれた」。チームのつながりを実感し、穏やかにほほ笑んだ。 指揮官はその姿を見ながら、瞳の奥を光らせていた。 「『去年の子たちの分まで』と選手たちが思ってくれている。何より園木が証明してくれた」 青学大と1分47秒差で復路へ。園木は言う。 「青学との差をもっと縮めておきたかったけど、望みはある。復路のみんなも強い」 1年前の悔しさと使命感を胸に、伝統の赤色のタスキをつないでいく。【藤塚大輔】