松田瑞生が9位健闘も入賞に届かず涙…オレゴン世陸で見えた日本男女マラソン界の新たな課題とは?
世界大会を経験している現役のある男子長距離ランナーは、世界大会のペースチェンジについて、「練習の変化走は大切かもしれませんが、根本的に実力の差が大きな要因としてあるのかなと思っています。10000mの世界記録と日本記録は1分以上、マラソンは3分以上も違います。そもそも実力がないのに、変化走をいくらやってもあまり意味がないんじゃないかなと感じています」と話している。 いずれにしてもパリ五輪まであまり時間は残されていない。マラソンは春(1~4月)と秋(8~11月)を軸に年に2回出場するのがトップ選手のスタンダードだ。そのなかでどのような成果を残すべきなのか。 来夏はブダペスト世界陸上が開催されるが、日本は来秋にパリ五輪の選考会であるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を予定している。そのためパリ五輪を狙う選手はブダペスト世界陸上に出場できない。 その状況を考えると、オレゴン世界陸上で代表6人中3人が欠場することになったのは非常にもったいなかった。一山は昨夏の東京五輪(8位)を経験しているが、鈴木と新谷がパリ五輪代表に選ばれたとしたら世界のトップが集まるメジャーな国際大会のマラソン出場経験がないまま勝負のときを迎えることになる。 世界大会で本気でメダルを狙いにいくなら、国内レースでいえば、東京マラソンに出場して、セカンドではなく、ファーストのペースメーカーに食らいつくようなレースを経験しないといけないだろう。またベルリンやロンドンなど海外の超高速レースや、ニューヨークシティやボストンのようにペースメーカーのいないメジャーレースで力試しを していくことも大切になる。 そのなかでどこまで自己ベストを短縮できるのか。国内でMGCを開催したところで、本番コースを走るわけではない。逆に、パリ五輪を狙う選手が世界陸上を1回パスするデメリットの方が大きいような気がしている。2024年のパリ五輪まであと2年。MGCを除けば、本番までにマラソンを走れるのは2~3回だ。メダルを本気で狙うためには、課題をひとつひとつクリアしていくしかない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)