大阪・関西万博の会場建設に黄信号 半導体工場がライバル
大手ゼネコンの危惧
実は、こうした遅れが目立つパビリオン建設にも、大手ゼネコンは無関心ではいられない。会場は4つの工区に分けられており、大林組・清水建設・竹中工務店・鹿島が参加する「工区統括施工者」が管理しているからだ。 「工区統括施工者」は、工区内で実施されている工事の調整役として、作業員と工事車両の入退管理、通勤バスの運用、仮設の道路や電気、給排水工事などに関わる。そのため、他の建設業者が手掛ける工事が遅れれば、自社の業務にも悪影響が及ぶ。 大林組の高木総括所長は語る。「休日や夜も作業をしたいという業者が出てくれば、工事車両の出入り口を開けたり、ガードマンを配置したり、作業員の通勤バスを走らせたりしなければならない」 ●タイプや設計の変更で工期短縮 タイプAのパビリオンの場合、25年4月の開幕に間に合わせるためには、以下のスケジュールを守る必要がある。24年10月中旬までに、大型の車両を使った資材の搬出入や、構造材の組み立て、外装工事などを終わらせる。そして25年1月までに内装工事を完了させる。 経済産業省や日本国際博覧会協会は、タイプAを希望しながら、まだ建設業者が決まっていない10カ国以上と協議を続けてきた。建設業者の決定が難航している場合は、協会が用意するプレハブ型のパビリオンに入るタイプC(共同館方式)や、協会などが建設業者との交渉や発注を代行して進める簡易的な建築物のタイプX(建物渡し方式)への移行も推奨している。 タイプAのままでも、設計や使う資材を変更する選択肢がある。規格化された部材を現地で組み立てるだけで造れる構造であれば、現場の負担も軽減できる。 日本に限らず、開幕日が決まっている国家的なイベントでは、準備の遅れが建設現場の負担になってきた。これまでは、ゼネコンが無理をして、突貫工事で間に合わせることも多かったが、日本では残業の上限などが法律で規制された。過去の常識はもう通用しない。「作業員の健康と安全を第一にできなければ、万博の成功はありえない」と全建総連の酒井氏は語る。
馬塲 貴子