マルイ系ブランドが海外でじわり人気 アーカイヴブームで高値取引
「ガラパゴス的進化」が若者の心を捉える
「マルイ系」と「お兄系」に共通するのは、「ガラパゴス的進化」をしたデザインであると、筆者は考える。どちらも日本国内だけをマーケットにして展開してきた結果、「ガラパゴス的進化」を重ね、独自のファッションスタイルを構築するに至った。それが、海外からの視点では、「オンリーワンの個性を持ったファッション」に映っているのだろう。 また、お兄系として挙げたブランドのなかには、ライダースジャケットなどに用いられるレザー素材の加工やパターンメイキングに強いこだわりを持っているところも少なくないが、そういったこだわりが今、国境と時代を超えて若者の心を捉えているのではないだろうか。 マルイ系もお兄系も、日本のファッションの主流ではなくなってから、かなりの時間が経過しているが、「アーカイヴ」という価値観で再発見されるようになった。その背景には、インスタグラムによるファッション情報の共有と、メルカリやヤフオク!が一般人に普及することで、それまで二次流通市場に出回らなかったニッチなアイテムが増えたことにあると思われる。 アーカイヴショップのキュレーターたちは、非常に強い熱量を持って、新しいファッションを“ディグ”し続けている。筆者は以前、ブログでデザイナーズアーカイヴについての記事を書いたところ、アメリカのアーカイヴショップから「ビューティービーストの服を日本で見つけたら、買って送って欲しい」という内容のDMが送られてきたことがある。おそらく、筆者以外にもたくさんのDMを送るなどして、商品の買い付けや情報の収集を行っているのだろう。 また、PPFMなどのマルイ系ブランドの歴史やコンセプトについての詳しい情報をインスタグラムに投稿しているアーカイヴショップもある。個性的なファッションに溢れている日本のファッション誌を入手し、その画像をインスタグラムに投稿する海外のアカウントは今やそれほど珍しくないが、PPFMは当時からファッション誌での露出が少ないブランドで、インターネット上でもその頃の情報はほぼ皆無だ。様々なサービスの普及で以前よりも情報収集は簡単になっているが、日本にいても非常にアクセスが難しいファッション情報を海外にいるキュレーターたちが入手するのにはかなりの手間と時間、そしてお金が必要だと思われる。 彼らが、ファッションに対して強い愛情と敬意を持って接していることの証だ。 今も、彼らは血眼になって、「クールな」アーカイヴファッションを探し続けているだろう。次に人気を集めるのは、まだ誰も「発見」していない日本のファッションなのかもしれない。 山田 耕史 ファッションアナリスト 1980年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学社会学部在学中にファッションデザイナーを志し、大学卒業後にエスモードジャポン大阪校に入学。のちに、エスモードパリに留学。帰国後はファッションデザインコンサルティング会社、ファッション系ITベンチャーを経て、現在フリーランスとして活動中。