マルイ系ブランドが海外でじわり人気 アーカイヴブームで高値取引
最新アーカイヴトレンドは「お兄系」
chill氏によると、マルイ系に続いて最近は「お兄系」ブランドが海外で人気を集めているという。 お兄系とは1990年代終盤に渋谷でブームとなった「ギャル男」をルーツとするストリートファッションである。アメカジをベースに、ロックやバイカー、サーフなどの様々なスタイルを取り入れ、そこにヤンキーやホストなどのいわゆる「ワル」な要素をミックスし、極限まで装飾性を高めたデザインが特徴だ。主に、当時お兄系の総本山的存在だったファッションビル、SHIBUYA 109-2に出店していた「バッファローボブズ(BUFFALO BOBS)」や「ジャックローズ(JACKROSE)」などのブランドを指す。キャッチーなデザインが持ち味のお兄系は、全国津々浦々のローティーンにまで支持層を広げていたが、2010年代後半にはマス層での人気も失速した。つまり、現時点では最も「ファッショナブル」とは遠いスタイルであるお兄系が今、海外で支持されている、ということになる。 また、愛用する著名人にヴィジュアル系ミュージシャンが多い「ルグランブルー(L.G.B.)」、「シェアースピリット(SHARE SPIRIT)」、バイカーやロック系のレザーアイテムを中心とした「オベリスク(Obelisk)」、マルイ系に分類されることもある「トルネードマート(TORNADO MART)」といった、一般的にお兄系に分類されるブランドではないものの、お兄系と親和性が高いテイストで愛用者が一部重なっていたブランドも注目されている。ヤフオク!を覗くと、これらのブランドのアイテムを入札競争の末、数万、数十万円の高値で落札しているのはアメリカのアーカイヴショップがほとんどだとchill氏は語る。 これらのお兄系ブランドは今、「リック・オウエンス(Rick Owens)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」といったデザイナーズブランドと並んで同じアーカイヴショップで販売されている。前衛的な作風のデザイナーズブランドと、お兄系ブランドが同じ価値観で扱われているのだ。 こういったお兄系ブランドのアイテムは、アメリカのZ世代のヒップホップミュージシャンが着用しているのではないか、とchill氏は推測している。 彼らにとって大切なのはデザインのようだ。それも、パッと見で惹きつけられる、飛び抜けて個性的なデザイン。そこでは、ファッションの歴史的背景やブランドのネームバリューはあまり重視されない。デザイナーズブランドであろうが、お兄系ブランドであろうが、彼らがクールだと思ったファッションがクールなのである。 chillweebにもお兄系ブランドに身を包み、2000年代に流行していたように茶髪を逆立たせた日本人の若者が来店するという。ただ、コスプレのように、当時のアイテムをそのまま着ているわけではない。2000年代のお兄系は細身のスキニーパンツ、あるいはブーツカットパンツが定番だったが、令和の若者の着こなしはトップスはお兄系ブランドのアイテムではあるものの、ボトムスは人気のルーズシルエットのカーゴパンツを着用するなど、今の時代感を反映したスタイルにアップデートされているという。