「身の丈以上」の「高額車」に新車で乗れる「残価設定ローン」! 魅力的だが「落とし穴」には要注意
「残価設定ローン」の魅力とは
新車の販売店では「いまはローンを使うお客さまの大半が残価設定型です。従来のローンはほとんど使われません。残価設定ローンのお客さまの数は、現金購入と同程度です」という。 【画像】3年後の残価率60%長を誇る乗るなら残価設定ローンがオトクなクルマたち 従来のローンとは、車両価格の全額を支払うローンのことだ。返済期間を終えると車両は自分の所有になる。 一方、残価設定ローンは、数年後の残価(残存価値)を除いた金額を分割返済する。たとえば3年後の残価が新車価格の45%であれば、その金額を除いた55%を3年間で返済する。いい換えれば、価値が下がるぶんだけを返済するから、リースに近いローンだ。返済期間を終えても車両は自分の所有にならないが、月々の返済額を少なく抑えられる。 そして、返済期間が終了した段階で、車両の返却、改めてローンを組んで返済を続ける、残価を支払って車両を買い取るという選択のできるタイプが多い。 このうち、残価設定ローンの特徴がハッキリする使い方は車両の返却だ。前述のとおり3年後の残価が45%なら、3年間で新車価格の55%を支払うが、3年後の残価が70%の車種であれば、3年間に30%だけ支払えばいい。買い取るには残価の70%を支払わねばならないが、返却するならその必要はない。そして高値で売却できる人気の高い車種ほど、残価も高く設定される。 従って、ユーザーにとって残価設定ローンのもっとも効果的な利用方法は、残価の高い車種で契約して、月々の返済額を割安に抑え、契約期間終了後に車両を返却することだ。そうなれば、価格の高い人気車を少ない返済額で利用できる。
事故や盗難には要注意!
この方法は、メーカーや販売会社のメリットも多い。まず車両の返却時に、ユーザーに改めて新車を売り込む機会が訪れることだ。そして、返却された車両が残価率の高い車種なら、中古車として高値で売却できる。残価設定ローンは、新車と中古車の販売を両方とも活性化させるため、メーカーや販売会社は力を入れる。 とくに最近は、安全装備や原材料費の高騰で、新車価格が値上げされている。約15年前の1.2~1.5倍だ。200万円前後で購入できたミドルサイズミニバンのノーマルエンジン車がいまでは280万円前後になり、ハイブリッドであれば大半のグレードが300万円を超える。 この値上げに対しても残価設定ローンは効果を発揮する。車両価格のすべてを返済する従来型フルローンよりも返済額が低く、割高感も生じにくい。中級と上級グレードの差額も、残価設定ローンの月々の返済額になると、少額と受け取られる。そうなると販売店は高価な上級グレードの購入を提案しやすい。 メーカーや販売会社にとって、残価設定ローンは車両の売れ行きを増やす上で都合がいいため、積極的に利用を促している。年率1.9~2.9%の低金利キャンペーンも、残価設定ローンに限って実施されることが多い。 このようなメリットがあるから残価設定ローンは人気だが、月々の返済額が少ないため、ユーザーは常に多額の債務を抱えている。全損事故を発生させたりすると、車両保険を充当しても債務が残る場合がある。追突などによって車両が大きく損傷すると、自分に過失がなくても車両に事故歴が残り、返却時に精算が生じることもある。走行距離などにも制約があるため、車両の返却を前提に残価設定ローンを利用する場合は、借りているつもりで大切に使う必要がある。
渡辺陽一郎