「重大なESG課題」は「気候変動」「情報開示」と「ダイバーシティ」、GPIFが運用機関に確認
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3月11日、「GPIFの運用機関が考える『重大なESG課題』」を発表した。GPIFはスチュワードシップ活動原則(財産を管理することを任された者=受託者の責任における活動原則)で、運用機関に重大なESG課題について積極的なエンゲージメントを求めており、これを踏まえて、GPIFは毎年、運用機関が考える「重大なESG課題」について確認している。その確認は2018年(債券は2020年から)に始まり、今回で6年目になった。今回の調査対象は、国内株式13機関、外国株式28機関、国内債券14機関、外国債券9機関だった。
ESG課題は、「E(環境)」、「S(社会)」、「G(ガバナンス)」のそれぞれに複数の課題があり、その中で何を重視し「重大なESG課題」として積極的に対話をしていくかということは、その時々の時代背景によっても変化することがあるだろう。ただ、運用を専門とする機関が、最終的には投資先の持続的な成長、企業品質の向上につながると考える項目は、ある程度の共通項はある。今回の調査で、運用機関が重大なESG課題として挙げたのは「気候変動」「情報開示」「ダイバーシティ」という課題だった。
国内株式の運用を委託している運用機関が、今回の調査で「重大なESG課題」として全社が挙げた項目は、「気候変動」「情報開示」「生物多様性」「人権と地域社会」「取締役会構成・評価」「少数株主保護」「資本効率」「ダイバーシティ」「サプライチェーン」「不祥事」だった。この中で、「気候変動」と「情報開示」は、パッシブ運用でもアクティブ運用でも重要な課題にあがった。パッシブ運用者とアクティブ運用者では重視する項目に違いがある。パッシブ運用では、従来から「ダイバーシティ」「サプライチェーン」「人権と地域社会」など「E」や「S」を含む長期的な課題を重大なESG課題として認識していた。今回、新たに「生物多様性」が重大なESG課題に加わった。これは、昨年9月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言が公表され、今後、自然関連の情報開示が広がっていく見通しにあることが背景にあると考えられる。