「重大なESG課題」は「気候変動」「情報開示」と「ダイバーシティ」、GPIFが運用機関に確認
また、アクティブ運用の運用機関では、従来から「取締役会構成・評価」「少数株主保護(政策保有株等)」「資本効率」といった「G」の課題を重大なESG課題と認識する傾向があった。今回も従来と同様の回答になっている。前回調査から「気候変動」と「資本効率」が重大なESG課題と位置付けるようになったが、「資本効率」については、2023年3月に東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が公表されたこともあり、今後、企業との対話が進んでいくものと期待される。
一方、外国株式のパッシブ運用機関が挙げる重大なESG課題は5年連続で「気候変動」「ダイバーシティ」「情報開示」になった。これらは、国内株式のパッシブ運用でも重要な課題として認識されている項目で、共通認識になっている。
このような株式運用の運用機関からの答えには共通項が見いだせたが、債券に関しては、全運用機関が一致して重大と考える項目はなかった。債券に関しては、社債投資家として考える重大なESG課題について2020年から確認している。今回の調査で4回目となったが、国内債券では「情報開示」と「気候変動」が重大な課題としての回答率が最も多く、外国債券では「気候変動」が最も多く挙げられた。
GPIFは、投資先および市場全体の持続的成長が運用資産の長期的な投資収益の拡大に必要との考えの下でESGを考慮した投資を行っている。また、このESG投資については、運用委託先の選定のみならず、パッシブ運用における採用するESG指数についても年々改善に向けた取り組みを重ねている。このようなGPIFの運用姿勢は、GPIFが運用を委託する運用機関のみならず、国内の機関投資家にも影響を与えている他、海外の機関投資家からも注目されている。ESGに関しては、「グリーンウォッシュ問題(環境関連への配慮が不十分であるにもかかわらず、環境保全ファンドなどと強弁するファンドがあったこと)」などの影響もあって、投資手法として投資家の関心が低下するようなこともあったが、GPIFのESG投資は検証を重ねながら着実に進展していることがうかがえる。(イメージ写真提供:123RF)
ウエルスアドバイザー