アラン・プロストが回顧する、アイルトン・セナとの”関係”が変わった瞬間「私に対して、完全に別人になった」
■プロストとセナが友人になった日
長年敵同士だったふたりは、友人同士となった。それまでセナは、プロストの名前を呼ぶことすら嫌い、握手をしたり、直接話すことも避けた。そこから考えれば、信じられないようなことだった。 「私は彼についての嫌な瞬間、嫌な思い出を、頭の中に残さないようにしているんだ」 そうプロストは言う。 「私は、(セナの人生の)最後の6ヵ月間のことを覚えている。その間に私は、アイルトンのことをこれまで以上によく知ることになった」 「彼は全くの別人のようだった。彼が何者で、そしてなぜ彼が時々(信じられないような)行動をするのか、それを理解したんだ」 「(ライバルだった頃の)彼の様子を、褒め言葉として振り返るんだ」 「アイルトンの主なモチベーション、そしてほぼ唯一とも言えるモチベーションは、私に集中すること、そして私を倒すことにあったということを理解するようになった」 「だからこそ、1993年にオーストラリアで一緒に表彰台に上がった時、私が現役最後のレースを終えた時、そのほんの数秒後にはすでに別人のようになっていたんだ」 この1993年オーストラリアGPは、セナが優勝し、プロストが2位に入った。その表彰台でセナは、プロストを優勝の段に引き上げたのだ。 「そのことは、今日の僕らが持ち歩いている、我々の関係についての記念品なんだ」 プロストは、引退後にセナと何度か話をしたという。その時の会話は、マシンやサーキットの安全性を高める必要があるという内容が多かったという。 「我々は、安全性の悪さなどについて話していたから、とても奇妙なことだった」 そうプロストは言う。 「彼は私に、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエイション/F1ドライバーたちが団結する団体)のリーダーになるよう何度も頼んできたが、私はこれを断ったんだ。その頃、我々はプライベートでよく話し合いをした。とても不思議なことだった」 「そういう記念を、彼の最後の時まで大事にしていた。イモラのレースの直前にも、2~3回会ったんだ。もちろん、彼は私に対しては、すでに別人だった。だからこそ、私はそれについてひとりで考えたいんだ」