シリア反体制派、攻勢開始から12日目で…首都制圧し「独裁者アサド打倒」宣言
【カイロ=西田道成、テヘラン=吉形祐司】シリアの反体制派は8日、アサド政権が支配する首都ダマスカスを制圧し、「独裁者アサドを打倒した」と宣言した。タス通信は8日、バッシャール・アサド大統領がモスクワに到着し、人道的配慮からロシアへの亡命が認められたと伝えた。父子2代で50年以上に及んだアサド政権は、反体制派の攻勢開始から12日目で崩壊した。
イスラム過激派組織「シャーム解放機構」(HTS)が主導する反体制派勢力は8日の声明で「ダマスカスは解放された」と表明した。国内融和に向け「協力し、連帯を促進して、国民と国のため最善を尽くさねばならない」と強調した。
アサド氏亡命の報道に先立ち、露外務省は8日の声明で、アサド氏がシリア内戦の当事者らと協議の上で大統領職を辞すると決め、シリアを去ったと発表。アサド氏は平和的手段での権力移譲を呼びかけたとしている。
反体制派が進攻した首都では8日、政権を支援してきたイランの大使館が何者かの襲撃を受けたが、大きな衝突は確認されなかった。中東の衛星テレビ局アル・ジャジーラなどは、政権軍が放置したとみられる戦車の上で歓声をあげる市民の様子を伝えており、政権軍はほとんど抵抗せずに首都を明け渡したとみられる。
政権崩壊を受け、今後は政権移行が円滑に進むかが焦点となる。ロイター通信は9日、HTSの指導者アブムハンマド・ジャウラニ氏がシリアのムハンマド・ジャラリ首相と会談し、政権移行の準備について意見を交わしたと伝えた。ジャラリ氏は8日、「国民が選ぶどんな指導者とも協力する用意がある」と述べ、権力移譲に応じる意向を示していた。
ただ、HTSは米国からテロ組織に指定されており、国際社会が新政権の承認を判断する際の障害となる可能性がある。このほか、シリアにはトルコが支援する北部の勢力、米国が支援する北東部の少数派クルド人主体の勢力など様々な反体制派勢力がひしめき合う。利害が複雑に絡みあうなか、各勢力が歩み寄り、情勢の安定に向かうかは不透明だ。