「思い出の味」が子どもの人生を支える 五感に残る原体験のつくり方
大人になってから、ふと思い出す親との思い出。そんな「原体験」は、いつか子どもの人生に元気と希望を与えるかもしれません。 子どもの五感に残る「原体験」のつくり方を、いしいおうこ先生の著書『モンテッソーリ式 親子でハッピー! 魔法のほめ方叱り方 自己肯定感が上がる子育て』よりご紹介します。 【マンガ】「育てやすい子・そうでない子」の違いとは?第2子を産んで気づいたこと ※本稿は、いしいおうこ著『モンテッソーリ式 親子でハッピー! 魔法のほめ方叱り方 自己肯定感が上がる子育て』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。
「原体験」は、 子どもの一生のお守り
これまでのストーリーの中でゆかさんにも言いましたが、私の講座ではご自身の幼少期や思春期をふり返ることがあります。反抗期を思い出して、親に言いたいこととして「もっと私を信じてほしかった」とおっしゃる方も多いです。やはり子どもを“信じる““聴く“はとても大切です。
五感に残る「原体験」は、子どもの生きる力になります
もうひとつ私がおすすめしたいのは、子どもの原体験を作っておいてほしいということ。「原体験」とは、子どもの五感を刺激して、子どもの生きる力になる強い体験のことです。 10歳くらいまでの間に、五感に残る経験をたくさんしてほしいです。週末の公園の芝生の匂い、特別な日に飲む梅ジュースの記憶、一緒に作ったお味噌汁の味……。 ある企業のYouTube動画企画で、同じお弁当箱にそれぞれのお母さんが作ったお弁当を入れて並べておいて、どのお弁当が自分の母の手作り弁当かを、大人になった元・子どもたちがあてる、というものがありました。正答率はなんと100%。みんな、お母さんを思い出し、大人が泣きながらお弁当を食べていました。 お弁当は、すべて手作りでなくてもいいのです。子どもの好物である冷凍食品のミートボールでも、立派なおふくろの味。要は、その“食べる“経験や味覚と“愛されていた“という記憶がセットになればなんでもOK。お稽古ごとの帰りにコンビニで買った鮭おにぎりやおでんだって、後から同じものを食べれば「水泳教室の後に、いつもお母さんが買ってくれたなぁ」と記憶がよみがえります。 親子は、いつまでも一緒にいられません。子どもが自立して家を出たり、いずれは親が先にこの世を去ります。子どもがひとりになっても「親に愛されたという記憶」をすぐに思い出せるのが、原体験の良さです。初めて遠くの町で一人暮らしをしたとき、コンビニであの鮭おにぎりを見つけて食べれば、子ども時代を思い出し、パワーがわいてくるかもしれません。このように原体験は、その子が生き抜く力を引き出してくれます。 原体験がたくさんあれば、つらいときも嬉しいときも、生きる望みをたくさん持てるようになります。特に、“匂い“や“味“は深く記憶と結びつきやすいので、食べ物だと原体験になりやすいのです。おひさまのポカポカでも、干したての洗濯物の匂いでもいいですね。ただ、そのときしか食べられない限定品だとなかなか入手しづらいので、身のまわりにあり、長く販売され続けるであろうベーシックな味付けや定番ブランドだといいと思います。 こう考えると、どんなものを食べて、週末何をしようか、もう少し考えようという気になりますよね。あまりお金をかけなくても、日々の生活の中で子どもに“一生のお守り“をいっぱい贈れるんですよ。少しだけ意識してみましょう。 【まとめ】 ・親子はいつか離れなければならない ・子どもがひとりになったとき、原体験がその子を支えてくれる
いしいおうこ(親勉チビーズ協会代表)