私立より、公立高校の校舎「古くさい」かも 建設ラッシュの時期が原因、進むリノベーション
私立高の校舎は新しく、公立は年季が入っている―。こんなイメージを、多くの人が抱いているのではないだろうか。実際、京都でも府立高は築年数が50年前後の校舎が多い。ただ、外観が古めかしいままであっても、内部の教室や設備はリニューアルが進んでいる学校もあるようだ。 【写真】雨でも滑らない廊下とは 府立高は、学舎と分校をそれぞれ数えると53校ある。その中で平成以降に、校舎が新改築された主な高校は、2018年の鴨沂を筆頭に、清明、乙訓、山城、洛北、嵯峨野など少数にとどまる。多くは、昭和40~50年代に建てられた校舎で、修繕や改修を繰り返して、現在に至る。耐震化は全校で完了しているので大地震による建物倒壊の恐れは低いが、「古い」という印象は、あながち間違いではない。 この年代の校舎が多い理由は、1971年~74年に起きた第2次ベビーブーム期で大幅に増えた子どもの受け皿として建てられたケースが多いからだ。府教委は75年~86年(昭和50年から61年)にかけて、北稜、鳥羽、北嵯峨、洛西、東稜、洛水、向陽、西城陽、南丹、農芸、莵道、南陽、西乙訓、綾部東分校など現在の全日制48校の約4割にあたる18校(分校、現在は再編された学校含む)を新設した。建設ラッシュのピークは79年度で、計40棟もの校舎が建てられた。 この頃に誕生した多くの校舎が現在、新改築についての議論を始める時期とされる築40年以上を迎えている。ただ、耐用年数を理由に全て建て替えるのは財政的な負担が重く、国の方針を踏まえて、府教委は施設の長寿命化の方針を取る。「60~80年は持たせたい」(管理課)との姿勢だ。 こうした状況下で府教委が進めているのが、老朽化が進んだ校舎の大規模改修(リノベーション)だ。全府立高の半分近くの23校で計画し、このうち福知山、木津、田辺、北嵯峨、園部については工事を既に実施した。新設すれば、数十億円の巨費がかかるのに対し、大規模改修なら1棟数億円程度に抑えられるという。 リノベーションが現在進んでいるのは伏見区の桃山高。昭和40~50年代に建てられた3校舎を含む全4校舎を改修する計画で、3年生の全教室、職員室、保健室、事務室などが入る1号館の工事は完了している。1年生の全教室などが入る2号館は25年1月から整備する。 1号館では、高圧洗浄機で外壁の汚れを落とすなどして、黒ずんだ壁面が往年の白さを取り戻した。内装に関しては、床と壁、天井板を新しく取り換えた。トイレを洋式化し、老朽化した空調設備を取り換えた。教室は床の木材パネルをフローリングに変更、廊下についても滑りにくい床材に更新し、安全性を高めた。 在校生からは「教室が明るくなった」「教室の床が平らになり、机がガタガタしなくなった」などと好評だ。府教委が本年度の高校1年を対象に実施したアンケートで、入学後に改善してほしい点を項目別に尋ねると、「施設設備」との回答が最も多かった。 ただ、リノベーションが受験生の獲得につながるかどうかについては慎重な見方もある。桃山高の松井紀夫副校長は「校舎がきれいになったから、入学希望者が増えることはないだろう。(同高に限れば)そのような基準で学校選びをする中学生は少ないのではないか」とみる。 府教委は、施設面で充実する私学を意識して、府立高校舎の設備面で魅力化を高める考えで、本年度中に基本構想を示すという。