「モデルたちはポストイットだらけ…」ファッション業界を皮肉った、アクシデントだらけのショーが話題
MILANO ミラノ/イタリア
9月に開催されたミラノファッションウィークは、アルマーニ、グッチ、プラダといった数々の大手メゾンが歴史を築いてきたこともあり、品質や職人技術を追求した素材を使用したコレクションや、テーラード技術が生かされた美しくエレガントなルックと、着心地の良さの絶妙なバランスを捉えることに成功したコレクションが評価される傾向が強かった。 ところが、近年は、既存のイメージを破壊するような独創的なコレクションや、ユーモラスでポップなコレクションが台頭しているようだ。その中でも一際注目を浴びているのが、スウェーデン出身のリンダ・フリベリ(Linda Friberg )とアダム・フリベリ(Adam Friberg)によって2017年に設立された、フィレンツェを拠点とするスカンジナビアのプレタポルテブランド、エーヴィエーヴィエーヴィ(AVAVAV)である。 【写真多数】ポストイットを剥がし忘れ、そのままショーに登場させてしまったという演出の様子
「ミス」を敢えて大胆に表現したことで 一躍有名に
ブランドを率いるクリエイティブディレクターは、スウェーデン出身のビート・カールソン。世界的に有名なファッション名門校であるニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインとロンドンのセントラル・セント・マーチンズでファッションを学んだ後、コーチ(Coach )でアクセサリーデザイナーを務め、その後パイアー・モス(Pyer Moss )でデザイナーとして経験を積んだ実力派若手デザイナーだ。2020年からクリエイティブディレクターを務める彼女のショーには、これまで、ランウェイで次々に転倒するモデル達や、パンツやドレスが剥がれ落ち、下着のままランウェイを歩くモデル達が登場した。ファッションショーで起こり得る、目を背けたくなるような「ミス」を敢えて大胆に表現したことで 一躍有名になった。
モデル達は、切羽詰った表情
そんなエーヴィエーヴィエーヴィの9月24日に発表された春夏2024コレクションのテーマは、「ストレス」。今回のショーの案内として、インスタグラムのアカウントにポストされたのは、 日付と「No Time to Design, No Time to Explain(デザインする時間も説明する時間もない)」と書かれたくしゃくしゃなポストイット。「今回はどんなサプライズが待っているのだろうか?」と期待が高まっていたのは言うまでもない。 ショーは 、スタッフが慌てて「AVAVAV」と書かれたポストイットを壁に貼り、急いでバックステージに戻ったところからスタート 。ランウェイに登場するモデル達は、切羽詰った表情でバックステージに小走りに戻っていく。それは、公共トイレの少ないヨーロッパで、1分1秒を争う事態の中、家まで一目散に帰っている時の辛さやストレスを思い起こさせた 。コレクションピースは、どれもメッセージ性があり、ユーモアたっぷりだったが、中でも衝撃だったのは、忘年会の鉄板ネタ、T.M.Revolution の「HOT LIMIT」に対抗できるかもしれない、ガムテープの即席タイトドレスや、「制作時間が足りなかった!」と主張するかのような「Add Back」と書かれた背中が丸開きのTシャツ、8月31日に泣きながら制作した自由研究を彷彿させるポストイットのスーツや、胸元にキラキラと光る「Made In Italy(イタリア産)」 という文字と、その下に付け加えられた、「(or China, can't remember *(または中国、思い出せない) )の文字がなんともアイロニックなパーカーではないだろうか。極め付けには、デザイナー自身が、「Filthy Rich(不潔な金持ち)」と書かれたトップスを纏い、涙でマスカラが滲んだかのように見える真っ黒な目元で 登場し、ショーは幕を閉じた。