男性に多い膀胱がんを知ろう

「男性に多い膀胱がんを知ろう」＜25＞ 　薬による治療は常に進化しています。「膀胱（ぼうこう）がん」の化学療法でも、2021年11月に新薬の「パドセブ」が登場し保険適用になりました。パドセブは、抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬が効かなくなった患者さんに使い、極めて有効な薬と評価されています。 　では、パドセブとはどのような薬なのか－。パドセブは「抗体薬物複合体（ADC）」という新しいタイプの治療薬です。抗体にがん細胞の分裂を阻止する抗がん薬が結び付いた薬で、この抗体が膀胱がんの表面に存在するたんぱく質の「ネクチン－4」と結合します。すると、パドセブががん細胞に入り込み死滅させます。これで分かるように、パドセブはがん細胞だけに入る薬なのです。 　膀胱がんが最終段階となると、これまでは数カ月で患者さんはなくなっていました。それが、パドセブを使うようになって、患者さんは1年のみならず長期に生きる方々がでてきています。有効であればずっと使い続けます。50％の患者さんに有効性があります。 　投与方法は点滴投与です。週1回の投与を3週行い、4週目は休薬。これを1サイクルとして繰り返し投与します。とても有効なパドセブではありますが、やはり薬なので副作用は出ます。私たちは患者さんとのコミュニケーションを重視して対応しています。「副作用が怖いから受けない！」という患者さんはいらっしゃいません。副作用を乗り越えて、患者さんは頑張っていらっしゃいます。 　そんな患者さんの思いが届いたのか、「従来の抗がん薬療法よりも、パドセブと免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダの併用療法がとても有効だ」、ということが海外で昨年秋に報告されました。60％の人が進行することなく効果が2年、3年と継続しているのです。結果、日本でもこの併用療法が化学療法の第1選択として、2024年秋には使用可能になるといわれています。化学療法は大きく変わります。（取材＝医学ジャーナリスト・松井宏夫）