欧州勢躍進の波に飲まれ女子W杯16強敗退のなでしこJが突きつけられた課題とは?
中長期的な課題としては、なでしこリーグの改革があげられる。ベスト8の顔ぶれを見渡せば、連覇を狙うアメリカ以外をヨーロッパ勢が独占した。ここ数年の間でビッグクラブが女子チームを保有して資本を注入し、環境や待遇面を劇的に改善してきた成果が如実に現れていると鈴木氏は言う。 「ドイツ代表の選手で2000万円を超える年俸が、プレミアリーグやラ・リーガでは3000万円、4000万円と言われている。日本ですぐに同じことができるとは思わないが、少しずつでもいいから選手たちがサッカーに集中できて、サッカーで生活できるような環境を整える努力を始めなければいけない。 日本サッカー協会はプロ化の検討を始めると聞いているけれども、プロ化とは何を意味するのか。クラブの練習環境も含めて、選手たちの目的意識を高められるレベルの高いリーグ戦のなかから強いチームが生まれ、優秀な選手、特に点を取れるストライカーを育てていく流れが必要だと思う」 ヨーロッパ勢の躍進をたどっていけば、8年前のなでしこの優勝に行き着く。体格を含めたフィジカル能力で勝る国々がパスワークを融合させていま現在に至るが、高倉監督のもとで世代交代が図られ、岩渕を中心に機能したときの新星なでしこならば、十分に対抗できる可能性も見出すことができた。 「勝てなかったのだからダメだ、と指摘するメディアやファン、サポーターも少なくないと思う。それでも、世代交代を怠った前任者の大きなツケが回ってきた状況のなかで作られてきたチームに、ようやく手応えが得られた点を前向きにとらえて、高倉監督には我が道を進んでいってほしい」 所属クラブでの戦いに戻り、早期敗退のショックも癒えたときに、フランスから持ち帰った手土産のなかに「希望」や「可能性」も含まれていることがわかるだろう。選手たちの奮起と日本サッカー協会や各クラブが描くベクトルが一致していくたびに、なでしこジャパンの逆襲も加速されていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)