虐待、出所、「ヤクザに追われ…」 “帰る場所がない”若者たち 「ニーズがあるのは分かっていても…」支援団体が抱えるジレンマ
トー横、グリ下…子ども型シェルターの構想も進む
制度の壁に人材不足、資金難。民間団体が抱える課題は多い。さらには、東京・歌舞伎町の“トー横”や大阪・ミナミ(道頓堀)の“グリ下”など、居場所を求めて繁華街に集まり犯罪に巻き込まれる若者たちにも支援が必要とされている。 そうした課題に対し、解決策のひとつとして検討されているのが、内閣府の「子ども家庭庁」による「子ども・若者シェルター」の設立だ。都道府県や児童相談所を設置する市が主体となり、社会福祉法人やNPOに運営を委託。さまざまな理由で家庭に居場所がない若者を保護し、委託運営する民間団体には、1か所あたり1758万円の補助金が下りるとされている。 野田さんは現在、「子ども・若者シェルターに関する検討会」の委員を務めているが、「ただシェルターを作るだけでは不十分」だと語る。 「当事者が『現状から抜け出したい』と考えていなければ、支援の手を伸ばしても拒否されてしまいます。シェルターがただのホテル代わりにならないよう、行き場がない子ども・若者の危険を回避する場所としての機能だけでなく、緊急避難後に『人生を立て直したい』と思っている子たちの“その後”を長い目で見守り、支えられる関係づくりが鍵となります」 保護施設を作るだけでは解決しない若者支援の現状。改善していくために、より多角的な方策が求められている。 ■倉本菜生(くらもとなお) 1991年福岡生まれ、京都在住。龍谷大学大学院にて修士号(文学)を取得。専門は日本法制史。 フリーライターとして社会問題を追いながら、近代日本の精神医学や監獄に関する法制度について研究を続ける。 主な執筆媒体は『日刊SPA!』『現代ビジネス』など。精神疾患や虐待、不登校、孤独死などの問題に関心が高い。 X:@0ElectricSheep0/Instagram:@0electricsheep0
倉本菜生