松坂大輔は成功するのか ── 過去に凱旋帰国した先発投手はどうだった?
WBCではコーチを務めた評論家の与田剛氏も、松坂の復活を支持する一人。 「成功するかどうかの第一の条件は体調。体がでかくなって、腕が横ぶりになり、全盛期のしなやかさはなくなった。けれど、トミー・ジョン手術から3年を経過して、ようやく全体のフォームバランスを考えて投げられるようになってきた。彼は実は器用なので、怪我をしている間は小手先でなんとかしていて、それが長続きしなかっただけのこと。今年は終盤に中継ぎスタンバイしたことで、彼は不満だったかもしれないが、結果的にコンスタントにマウンドに上がることになって、感覚を取り戻すにはいい機会だったと思う。私が注目したのは、今年になって目立ち始めたタテに大きく割れるカーブ。あれを投げるのは体の使い方がタテぶりになっていなければ無理。いいキャンプを過ごすことができれば、彼が求めているストレートの球威で押すスタイルのピッチングができると思う。リリーバーに勝ちにつなげてもらえば、160から170イニングを投げて、10勝は十分に勝てると思う」 与田氏は、今春の米国キャンプで松坂を取材、その復活過程と、松坂の意図を聞いて、納得したという。 ただ不安がないわけではない。 先発型のメジャーからの凱旋投手で成功したのは、2006年にメッツから古巣のヤクルトに凱旋した石井一久投手くらいだろう。初年度に11勝7敗、防御率3.44の成績を残してヤクルト、西武と、帰国後8年間プレーして65勝した。 2003年にレンジャーズから阪神に移籍した故・伊良部秀輝投手は、初年度に13勝8敗、防御率3.85の成績を残して優勝に貢献したが、翌年は、ガタっと成績が落ちた。 2012年にそろって凱旋帰国した、川上憲伸(ブレーブスから中日)は、7試合で3勝1敗、防御率2.83、井川慶(ヤンキースからオリックス)は、12試合で2勝7敗 防御率4.65と、結果を残すことができなかった。 それほど、先発型ピッチャーの凱旋帰国は簡単ではない。勝手知った野球界に戻るだけのことだが、マウンドやボールの違いへの対応や、日本野球の細かさ、癖の修正など、日本野球の感覚を取り戻すことにも骨が折れる。生前の伊良部は、「球種の癖を盗まれることは、アメリカでなかったことなので戸惑った」と言っていた。しかも、長い期間メジャをー経験してきた、ほとんどの投手が年齢的な衰えという問題も抱える。