手術で死んだウサギは「家族同然」…病院側に66万円賠償命令 京都地裁がペットに「高額慰謝料」を認めた理由【弁護士が解説】
先日、獣医療過誤でウサギを喪ったことについて慰謝料60万円が認められたというニュースが各所で報じられました。 【写真】「生活保護を受けるのであれば、飼っている猫は手放さないと」と言われましたが…本当ですか【弁護士が解説】 ペットは法律上「物」として取り扱われています。そして、通常、物を壊されたことに対する慰謝料は発生しません。これは、物の賠償額=価値とはあくまでその物の経済的な価値である、という考え方が背後にあるためです。 しかし、最近では、ペットになにかしら被害があった場合は、飼い主に慰謝料が認められるようになってきています。ペットは単なる「物」ではない、大切に飼養されているペットは家族の一員である、という考え方が、裁判所にも少しずつ浸透してきているのです。もっとも、慰謝料の額はせいぜい10万円程度というのが現実です。 この点で、原告夫婦合わせて60万円(各自30万円)の慰謝料が認められた、という裁判結果は耳目を引くもので、そのため多数の報道がなされました。 そこで私は、この判決を閲覧してまいりました。京都地方裁判所令和6年3月26日判決です。特定を防ぐため、一部の事情を簡略化しています。
食欲不振を起こしたため受信した動物病院で…
この裁判は、ウサギを飼っていた原告夫婦が、ウサギに外科手術を受けさせたところ、術中に死亡してしまったため、担当医らを被告として、慰謝料各々300万円ずつ、弁護士費用各々30万円ずつの、合計660万円の支払いを求めて起こしたものです。 原告夫婦は、平成30年にウサギを迎え入れました。ウサギのために広い家に引っ越すほどに、ウサギをかわいがっておられたそうです。 令和3年8月15日、ウサギが食欲不振を起こしたため、被告の動物病院を受診、翌16日にCT検査をしたところ、腸管内に異物が発見されました。 ウサギ自身はそこまで衰弱した様子を示していなかったのですが、被告動物病院の担当獣医師は外科手術が必要と判断し、直ちに外科手術することを原告夫婦に勧めました。 原告らは、様子見をしたいと手術を拒否したそうですが、担当医は「このままでは腸が破れて死に至る危険がある」「手術するならば今日したほうが救命できる」「自分の子供だったら今すぐ手術する」などといったことを述べて外科手術を強く勧めてきたため、最終的には手術に踏み切ることになりました。 もっとも、ウサギの食欲不振(食滞)は、誤飲等で何かが詰まった物理的要因によるものと、ストレスなどによる機能的なものがあるそうですが、後者の場合外科手術は禁忌とされていますし、そもそも開腸手術自体が、危険性の高いものでした。 しかし、原告夫婦は、担当医からそのような説明は受けず、したがってそのような事実を知らないままに、外科手術に同意したのです。 そしてウサギは開腸手術を受けましたが、腹部腸管を切開中に心拍が低下し、そのまま死亡してしまいました。