手術で死んだウサギは「家族同然」…病院側に66万円賠償命令 京都地裁がペットに「高額慰謝料」を認めた理由【弁護士が解説】
裁判所の判断は…「獣医師としての説明義務に違反」
裁判所は、概略、以下のように判断しています。 ◇ ◇ ウサギの食滞には様々な原因があり、必ず手術しなければならない症状ではない。ウサギは当日も著しく衰弱はしていなかったのだから、獣医師としては内科的治療を継続する選択肢も当然あったはずである。 そうだとすれば、担当医は、飼い主である原告夫婦に対して、外科手術を勧めるだけではなく、他に選択可能な治療方法(内科的治療の継続)もあること、その方法と外科手術との比較検討や予想される結果(予後)の内容等を説明して、手術について真摯な同意を得る必要があったといえる。 ところが担当医は、外科手術が必要という結論を前提とした説明しかせず、外科手術自体の危険性の説明も、他の選択肢についての説明もしなかった。むしろ、「このままでは腸が破れて死に至る危険がある」「手術するならば今日したほうが救命できる」「自分の子供だったら今すぐ手術する」などと述べて、外科手術の選択を求めていた。 このような態度が、獣医師としての説明義務に違反することは明らかである。 原告夫婦がもともと手術に反対していた経緯からして、担当医が十分な説明をしていれば、原告夫婦が外科手術に同意しなかったことは明らかで、外科手術をしなければウサギは死ななかったといえるから、担当医の説明義務違反がウサギの死亡という結果を招いたといえ、担当医には不法行為責任が成立する。 ◇ ◇ 慰謝料については、ペットがかけがえのない家族の一員と言えること、特に本件のウサギは原告夫婦から並々ならぬ愛情を受けていた存在であり、それが突然失われてしまったことへの原告夫婦の絶望感は察するに余りあるものであること、当初は謝罪していた被告動物病院側が途中から態度を冷たく豹変させたこと、といった理由から、各々30万円という額を認めました。 また、本件では、被告動物病院側が裁判の途中で説明不足を認め、適正な賠償額を支払う意向を示しており、このことも考慮されたものと思われます。