<ダンダダン>作者・龍幸伸に聞く誕生秘話 根底に流れる希望 リアリティーにこだわり テレビアニメ化も話題の「ジャンプ+」人気作
◇「ベルセルク」の影響 表現に手を抜かずリアリティーを追求
どこか心を温かくしてくれる希望のある展開、キャラクターのデザイン、そして、リアリティーを大事にしていると語る龍さん。そのマンガ家としての源泉はどこにあるのか。好きなマンガを聞いてみると、故・三浦建太郎さんの「ベルセルク」を挙げる。
「世界観をあそこまで作りこんでいる作品って、ほかにないんですよね。ファンタジーものはたくさんありますけど、作品内にリアリティーがある作品はあんまりないなと。ファンタジーだからリアリティーがないのは当たり前じゃんと思うかもしれないけど、そういうことじゃなくて、その作品の世界の中にいたら『こういうものがあるかもしれない』『本当だ』と思える。それがちゃんと描かれている。マンガ、アニメと、いろいろな媒体がありますけど、要は表現、相手に伝えるということなんですよね。相手に伝えるために見せる、見せるために世界を作っておく。それだけでその世界に入り込める。だから、あんなすごい作品はほかにないよなと。ノーベル賞あげたほうがいいんじゃないかって」
「ベルセルク」の影響もあり、「画面の表現は、できるだけ手を抜かないようにしています。リアリティーを損ねたら、その時点で表現をさぼってるってことになってしまう。それはできるだけしないように努力しています」とこだわりを語る。
「ダンダダン」も廃虚、廃トンネルなど心霊スポットの描写はかなり緻密だ。筆者も取材で心霊スポットと言われる廃虚を訪れたことがあるが、その時の恐怖がよみがえるようなリアリティーがある。
「心霊スポットのような“怖い場所”に関しては、汚しをたくさん入れることを意識しています。伊藤潤二さんの作品でも、ものすごく細かい線がたくさん入っているんですよね。それが執念にも思えるというか、気持ち悪さがある。僕も執念、情念を込めて描いています」
まさに思いを込めて描かれている「ダンダダン」。それがテレビアニメでどう表現されるのか、気になるところだが、「原作にはないようなシーンもありますし、うまく原作のニュアンスをくみ取って演出してくださっていて、『そう来たか!』『ナイス解釈!』と思うようなシーンもあります。楽しみにして見ていただけたら」と笑顔で語っていた。