<ダンダダン>作者・龍幸伸に聞く誕生秘話 根底に流れる希望 リアリティーにこだわり テレビアニメ化も話題の「ジャンプ+」人気作
「貞子vs伽椰子」は、ホラー映画ではあるが、日本ホラー界の2大ヒロインが激突するというエンタメ要素もあり、その点にも影響を受けた。
「やはり、妖怪ものは、昔の悲惨な出来事から作られる要素が多いので、もうちょっとエンタメ寄りにしたい、楽しい感じにしたいという思いはありました。いろいろな怪談を聞いていても、化け物や妖怪は、元々人間だったし、なりたくてなったわけじゃない。だから、悪者って感じじゃないんですよね。葛藤を抱えている人たちなんじゃないか、と考えています」
「ダンダダン」に登場する妖怪や宇宙人は、最初こそオカルンたちの脅威として登場するが、その裏には悲しい過去、背景がある。ただ、怪異たちとの戦いが終わると、敵だった怪異たちもどこか救われるような、希望が見える描写がある。
「やっぱり希望がないと悲しすぎるじゃないですか。とにかくエンターテインメントなので、読んだ人に絶対に希望というものをちゃんと見せて終わらせたいと思っています」
◇ギリギリを攻めたキャラクターデザイン
「怪異は悪者じゃない」という龍さんが描く妖怪や宇宙人は、ビジュアルも魅力的だ。特撮ドラマ「シルバー仮面」「宇宙猿人ゴリ」などを見ていたという龍さんは「昔の特撮って、なんだか可愛いんですよね。工夫して作っている感じ、手作り感がすごくいいというか」と語り、デザイン面では、特撮に影響を受けている部分もあるという。たしかに、「ダンダダン」の怪異は、怖いけれど親しみやすいような、不思議な魅力がある。
「特に宇宙人のデザインは、成田亨さんのデザインにすごく影響を受けているので、全体として突飛な感じに発想を飛ばすのが難しいところがあるんです。突飛な感じのデザインは、描いたはいいけど入り込めないというか。僕自身、デザインはぱっと見た瞬間に『ハッ!』と思わせなければいけないものだと思っています。だから、『ダンダダン』では、そこら辺のギリギリを責めているというか。元々人間だった妖怪の場合は、ぱっと見でで『この妖怪だ』と分かりやすい。一方、宇宙人の場合は、ちょっと取っつきづらい、入り込みづらいような、ギリギリのラインで描いているかもしれないです」