ちらつくトランプ氏の「影」 グローバルサウス存在感誇示 APEC、G20首脳会議〔深層探訪〕
南米のペルー、ブラジルで連続して開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が19日、全日程を終えた。一連の首脳会議では、新興・途上国「グローバルサウス」が存在感を示す一方で、保護主義に傾くトランプ次期米大統領の「影」もちらついた。自由貿易の推進や気候変動問題に国際協調で取り組む姿勢を確認した今回の会議の成果は、来年1月のトランプ氏の就任後、早々に試されることになる。 【写真特集】トランプ新政権の顔ぶれ ◇ブラジル、求心力に思惑 「世界の多くの人に利益がある視点を(議論の)テーブルに乗せた」。G20議長国ブラジルのルラ大統領は19日、会議を総括するスピーチで訴えた。来年の議長国、南アフリカを含め4年連続で「途上国がG20の議長国を占める」とグローバルサウスの台頭を誇示した。 ブラジル主導の「飢餓・貧困に対するグローバル同盟」は18日、82カ国と24国際機関などが参加して発足した。2030年までに5億人への現金給付により飢餓の根絶を目指す。G20首脳宣言には、途上国に金融支援を行う国際開発金融機関の機能強化も盛り込んだ。グローバルサウスの代表格であるブラジルは、来年の新興国グループ「BRICS」議長国を務める。G20の途上国支援への貢献をてこに、BRICS内での求心力を高めようとする思惑がある。 ◇自由貿易・気候変動で念押し APECは域内全体を対象に経済を統合する「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」構想の実現に向け前進を図ることで合意。首脳宣言は「ルールに基づく多角的貿易体制への支持」を改めて明記した。「米国第一」を掲げるトランプ氏が1期目で米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱を決めたことを念頭に、貿易自由化の流れを後退させないようくぎを刺した形だ。 1期目のトランプ政権は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からも離脱した。これに関しても、G20は「多国間主義への強いコミットメントを再確認する」と念を押した。 ◇波乱の前兆 G20では今後の波乱を予感させる動きがあった。アルゼンチンのミレイ大統領が首脳宣言の一部に異議を唱えた。宣言採択の阻止こそしなかったものの、今回の目玉である飢餓・貧困問題に「国家を介入させないことが解決の道だ」と主張し、公然と反対を表明。多国間で協力するG20などの枠組みが「危機」を迎えているとまで言い切った。 ミレイ氏は昨年12月の就任前からトランプ氏を称賛。今月14日には、返り咲きが決まった同氏と外国首脳として初めて対面で会談した。トランプ氏と同様に気候変動に懐疑的で、アゼルバイジャンで開催中の国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)に出席していたアルゼンチン代表団を引き揚げさせた。トランプ氏は心強い援軍を得た格好だが、ミレイ氏の行動はグローバルサウス勢の反発を招きかねない。(リオデジャネイロ時事)