キューバは「貧しい国」なのか? 「幸せの国」なのか?
米オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長の会談が4月11日、実現しました。両国の首脳会談は、実に半世紀ぶり。国交回復に向けた「歴史的な第一歩」と伝えられます。世界の眼があつまるキューバ。この3月、首都ハバナから東端のバラコアまで7都市をまわり、人びとの暮らしをのぞいてきました。2週間の現地訪問をもとに、キューバの「いま」をお伝えします。 【写真】キューバ国民は米国との国交正常化を歓迎しているの?
◆キューバといえば野球とラテン音楽だけど……
50年代のアメ車と並んで、キューバを切り取る「絵」になるものは、野球とラテン音楽でしょう。キューバ情勢を伝える日本のTV報道では、ボールを投げる打つ少年のカットがよく挟みこまれます。ところが公園や広場では、ボールを蹴る子どものほうが圧倒的に多い。サッカーのほうが人気なのでしょうか? 大人たちに聞くと「われわれは野球だけど、近頃の子どもはサッカーだなあ」と返ってきました。キューバは貧しい国です。グローブやバットはぜいたく品。子どもには手が届きません。サッカーはボール一つで遊べるし、TVのチャンネルが5つに増え、海外中継を見る機会が増えたことも背景にありそうです。それでも路地裏では、中高年には懐かしい手打ちや三角ベースに熱中する少年の姿、ペットボトルのふたを木の枝で打とうとする幼い子の姿も目にしました。めったに当たりませんが。
国際野球連盟のランキングで、キューバは常にトップ3に入っています。野球が国民的スポーツであることは間違いありません。日本のWBC連覇も多くの国民が知っていて、何度か「イチロッ!」「マツザッカ!」と声をかけられ、またグリエル(横浜DeNA契約解除)やデスパイネ(千葉ロッテ)の魅力を熱く語るムラートの中年男性に足を止められたこともあります。熱度では、関西の阪神ファンも上回りそうです。なお、ムラートとは白人と黒人の混血のこと。野球代表チームを見るとキューバ人は黒人ばかりに思えそうですが、ヨーロッパ系25%、アフリカ系25%、混血のムラートが50%です(日本外務省推計)。もっと白人の比率が高いように感じましたが、「一つのキューバ」をめざすカストロ政権は、差別につながる人種別の統計調査はおこなっていません。