キューバは「貧しい国」なのか? 「幸せの国」なのか?
◆キューバでインターネットは使えるの?
社会主義国キューバは、国民の情報統制にも目を光らせてきました。旅行者が困るのは、インターネットが自由に使えないことです。2年前ようやく一般国民に解禁されましたが、接続料金が高くほとんど普及していません。微弱で高額なWi-Fiも、首都ハバナの一流ホテルに限られています。地方に向かうと、否応なく“ネット断ち”できます。 ところがバスの車中や路上で、スマホの画面をさわる若者の姿をちらほら目にしました。数年前にはなかった光景のようです。主な用途はゲーム、音楽、写真撮影で、メールはわずか。Webの閲覧はできません。キューバの若者が一番強く欲しているのは、外の世界に当たり前にあるモノや情報を、当たり前に手に入れることです。そして世界とつながること。政治には興味がないという若者からも、その飢餓感だけはひしひしと伝わってきます。
◆キューバは貧しい国なのか? 幸せの国なのか?
英・環境保護団体「Friends of the Earth」による、143か国を対象にした「幸福度指数(2009年)」で、キューバは世界第7位です(日本は75位)。社会主義国特有の「暗さ」は感じられず、音楽とスポーツが身近で、自然も豊か。人びとはみな親切で陽気で、限られた資源を大事に使う。環境保全面に偏った「まゆつば」な指標と思えそうですが、突き抜けるような青空の下、サルサを踊る地元の人たちの明るい笑顔を見ていると、まゆにつばをつけたことを忘れそうになります。 キューバは貧しい国なのか? 幸せの国なのか? 帰国後、よく投げかけられる問いです。ヨーロッパや経済成長著しいアジアの国々を訪れたあと、こう問われることはありませんでした。ところがキューバだけは別。年間自殺者3万人超の日本と比べながら、「三丁目の夕日」のあの頃を想像しながら、みな自分の胸に問いかけてしまうのではないでしょうか。このこと自体が半分答えになっているかもしれません。 一方、「国境なき記者団」による「報道自由度ランキング(2015年)」では、キューバは180か国中169位です(日本は61位)。国民には政党を選ぶ権利も、政権に異を申し立てる自由もありません。経済状況もきわめて厳しい。社会主義的な平等の「理念」と「忍耐」を内面化しているとはいえ、自由に海を渡ることも難しいキューバの人びとに、「○○は貧しい国か」「○○は幸せの国にみえるか」「○○に行きたいか」と問うことはできません。 (フリー編集者・大迫秀樹)