<米大統領選>次戦が正念場のトランプ氏、クリントン氏の苦戦は想定内
もっとも、6つの会場でコインの表裏で勝敗を決めるコイントスが行われ、そのいずれもクリントン氏が勝ち取るなど、強運に支えられた面もある。ニューハンプシャー州でサンダース氏が勝利すれば、全国的な知名度も増し、同氏が公民権運動などに積極的に関与してきた経歴も知れ渡る。そうなれば、現時点ではクリントン氏の支持基盤である黒人やヒスパニック系などの票田も盤石ではなくなる可能性もある。今回の結果には安堵しつつも、サンダース氏への警戒強化と選挙態勢の引き締めを図ってくるだろう。 民主党ではアイオワ州の党員集会を制した候補者は1996年以降、一貫して候補者指名を獲得しているが、かのクリントン氏相手に互角の戦いができた点にサンダース陣営は手応えを感じ、自信を深めているだろう。少なくとも「敗北」とは捉えていないはずだ。 このように考えると、共和・民主両党ともに、有力候補者のいずれにも決定的な勝ち負けが付かなかったのが今回のアイオワでの戦いと総括できそうである。つまり、まだまだ目が離せないということだ。
■渡辺靖(わたなべ・やすし) 1967年生まれ。1997年ハーバード大学より博士号(社会人類学)取得、2005年より現職。主著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)など