<米大統領選>次戦が正念場のトランプ氏、クリントン氏の苦戦は想定内
アイオワ州の党員集会での最大の勝者はマルコ・ルビオ上院議員かもしれない。44歳で、当選1回、キューバ系移民2世とクルーズ氏とそっくりだが、政治的にはより穏健とされる。これまで共和党の候補者を輩出し続けてきた主流派(穏健派)からすれば、トランプ氏は異端であり、クルーズ氏は極端すぎる。彼らに比べればルビオ氏は保守派とはいえまだ「まし」で、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事など当初主流派が期待していた候補が軒並み低迷するなか、保守派と穏健派を辛うじてとり結ぶことのできる貴重な存在となりつつある。 その彼がトランプ氏に肉薄する形で今回3位につけた点は大きい。今後、穏健派の候補が撤退を余儀なくされるなか、彼らの票がルビオ氏に集まれば、トランプ氏やクルーズ氏にとっては大きな脅威となる。ちなみに、民主党のヒラリー・クリントン陣営のシニア・スタッフを務める友人の話では、同陣営が最も手強いと踏んでいるのはルビオ氏だそうだ。
■民主党
さて、その民主党だが、クリントン元国務長官が大本命である点は揺るがない。バラク・オバマ大統領の選挙戦を支えたスタッフがクリントン陣営に続々と加わっており、支持表明している党内の実力者はすでに465人に達している。かたやバーニー・サンダース上院議員への支持表明は僅か2人に過ぎない。資金力・組織力・知名度・実績のいずれにおいてもクリントン氏が圧倒している。 とはいえ、アイオワ州の民主党員は革新的な傾向が強く、2008年の党員集会では中道派のクリントン氏ではなく、より左派(少なくとも当時は)で草の根の支持を集めた新顔のオバマ氏を選んだ。その点では、もともと反戦平和主義や民主社会主義を掲げるサンダース氏に有利な政治風土にあり、8年前の「オバマ旋風」ほどではないにせよ、ある種の社会運動的な熱気が、若者を中心にサンダース待望論を下支えした。上述したように、党員集会ではそうした熱気がとりわけものを言う。 さらに言えば、9日のニューハンプシャー州はサンダースの地元バーモント州に隣接し、かつ人口構成も近似していることもあり、サンダース氏の優勢が伝えられる。それゆえ、クリントン陣営はアイオワ州とニューハンプシャー州の期待値を下げており、「仮に両州を落としても、人口規模がより大きく、人口構成がより多様な他州で容易に挽回できる」と踏んでいた。その意味で、今回、アイオワ州で辛勝(実質的は引き分けだとしても)できたことに安堵しているだろう。