「裁判所は何のために存在しているのか」代理人が批判 「ストーカーは事実無根」訴えが門前払いされた理由
●二審判決は「最高裁の判例に違反する」
しかし、訴訟では処分性や確認の利益がないとして訴えを却下されている。女性が本当につきまとい等をおこなっていたのか、警告が妥当だったのかどうかなどについて、判決では何も判断されていない。女性が訴えたい内容を判断してもらうところにまで行き着いてすらいないのが現状だ。 松村弁護士は、二審判決が警告の法的効果を示唆しつつ、処分性なしとした判断を批判する。 「警告が行政指導であるということは、従わなくても何も不利益を受けないということです。警告は、ストーカー規制法制定当初は、行政指導として位置付けられてきたのかもしれません。 しかし、警告の発令手順、書式について厳格なルールを規定するストーカー規制法・同規則の定めからすれば、もはや警告は行政指導とはいえないものに変容し、罰則がない禁止命令に非常に近いものと考えられます。 警察としても、警告に従わなくていいものであるとは、到底考えていないはずです。警告が行政指導というのであれば従う義務はないはずですが、そのように捉える者は極めて少数でしょう。 これは、警告を受けた者の9割がストーカー行為を止めるというデータによっても裏付けられています。一審・二審も、警告の実情を正確に理解せず、行政指導であると一括りにしている点で不当判決です」 さらに、「警告に法的効果はあるとしながら、銃刀法改正時の立法者の意思として、警告を行政処分にはしない扱いだったと捉えられるので処分性を否定するというのはおかしい」と判決の論理が不合理であると指摘する。 「立法者の意思などというものは、私も目を通した当時の法改正に関する資料などからは読み取れません。『警告を行政処分としない立法がなされた』のではありません。“後法優越の原理”により、銃刀法改正をもって警告の意味合いも変容したものと解すべきです。 こうした分析を踏まえると、警告は相当な重みのある行政処分であり、だからこそ、銃刀法改正の際に、欠格事由として取り込まれたのです。行政指導であれば、何らの法的効果も生じませんし、生じてもいけません。銃刀法の欠格事由という法的効果を生じる警告は、もはや行政指導ではないのです」 松村弁護士は、「警告が行政指導にすぎないということであれば、冤罪の場合でも裁判で取り消す手段も一切ないことになる」と訴える。 「事情聴取も、理由を提示する必要もありません。警告制度が悪用されれば、一方的な申告で、警告が発令され、ストーカー扱いをされる事態も生じかねません。 実際に、事実無根の警告を受けたことが発端で殺人事件に発展した事件や、まったく事情聴取もないのに、いきなり警察が自宅にきて警告書を交付され、銃砲許可が取り上げられてしまったケースもあります。 処分性があるのにないものにするという、裁判を受ける権利を否定するような立法裁量や立法者の意思というのは存在しませんし、それを許容するならば、裁判所は何のために存在しているのか。裁判所の真価が問われる場面です。一審・二審は、処分性の定義を示した最高裁の判例に違反するものだと思います」 すでに最高裁へ上告しており、引き続き一審・二審の判決が不当であることを訴えていくという。 「判決に関する記事についたネット上のコメントなどを見ると、悪質なストーカーが警告などに納得できなくてしつこく争っているという意見などもありました。 そういうケースも中にはあるかもしれませんが、一方で冤罪だと訴えている方もいて、そういう人のための救済手段はどうなっているのかという話ですので、その点はご理解いただきたいです」
●女性本人のコメント
女性は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、次のように回答した。 「ストーカー規制法の警告は、制度的に、私の事例のように事実が逆さまにされ、冤罪が起こりやすい危険な制度です。冤罪なのにも関わらず、ストーカーのように扱われているケースもたくさんあると思います。 私もそうですが、警告を受けた一般人は法律に関する知識もありません。冤罪を晴らす方法もありません。誰も警察と戦う勇気を持っていないから、私が裁判の場ですべてを示します」