「裁判所は何のために存在しているのか」代理人が批判 「ストーカーは事実無根」訴えが門前払いされた理由
●ストーカー扱いする一方で飲み会で目の前に座る「不自然だ」
女性から相談を受け訴訟でも代理人を務めている松村弁護士によると、警告を求める申出をした男性は、女性にとってメンターと呼ばれる指導担当の先輩で、人数が少ない研究室で先輩に嫌われてしまうと指導してもらえないおそれや、就職活動にも支障が出かねない可能性など“力関係”があるような間柄だったという。 女性は当時既婚者で、夫は中国にいて、単身留学してきたという立場だった。男性から好意を寄せられた際、不利益を被ることをおそれやむなく応じてしまったという。 再び同じように迫られたときには断ったが、その後男性は2022年2月、警察に警告を求める申出をおこなった。もっとも、その時点ではいきなり警告が出されたわけではなく、この時点では口頭の注意でとどまった。 「口頭注意があったからといって、2人とも大学院を辞めるわけでもないし、研究上のやり取りをなくすことは不可能です。この点を警察に確認したら、『研究に関するやり取りなら大丈夫』とのお墨付きをもらって、いったんは収まりました」 とはいえ、同じようなことになっては困るとして、女性も一人で大学院に行かないようにしたり、研究室の集まりでも担当教授に男性と接触しないよう配慮してもらったりするなどして気を付けていたようだ。 ところが、同年6月にゼミの食事会で同席することがあり、そのことでまたストーカー扱いされては困るとして、話をしたい旨のメッセージを送ったら、そのことが契機となって、奈良県警から警告を文書で受けたという。 「食事会には女性が先に参加表明をしていて、そこに男性も来ました。男性は女性のほぼ正面側に座って、女性が他の学生と料理する場面を見ながら、女性が作った料理も食べて、一緒にゼミの集合写真も撮っていた。 ストーカー申告をしたことがあるにもかかわらず、そういう接触を嫌がらないというのは不自然ではないでしょうか」 ストーカー扱いされた影響は大きかった。研究室だけでなく、警察から中国にいる夫にも連絡がいき、夫婦関係にもヒビが入った。 女性から相談・依頼を受けた松村弁護士はまず、警告について、行政手続法に基づく中止の申出をおこなった。しかし、警察の認定が覆ることはなかったため、訴訟に踏み切った。