不動産取引における仲介手数料は、本当に高いのか? 手数料の値引きがリスクになる理由を解説!
不動産の仲介手数料は値引きできるのか?
特に売買における仲介手数料は、取引される物件価格によって支払いも大きくなるため、負担に感じる方も多く、なかには値引きを希望される人もいらっしゃいます。 仲介手数料の値引きは可能なのでしょうか。また、値引くことでのリスクについても考えてみましょう。 仲介手数料の値引きは可能? 結論から言えば、仲介手数料の値引きは可能です。あくまでも私の主観ですが、会社のスタンスによって値引きの有無があるように感じます。 ある程度までの値引きを許容している会社や、どれだけ高額な物件でも、仲介手数料を定額にしているところもあります。その一方で、一切の値引きに応じない会社も存在します。 近年では、不動産ポータルサイトの普及により、消費者が物件情報を直接入手できるようになったことで、仲介業務の一部が効率化されています。業務効率化によるコスト削減分を手数料の値引きという形で還元する不動産会社が増えてきました。 さらに、IT活用やDX化によって、契約書作成や重要事項説明などの業務も効率化が進んでおり、これも手数料の柔軟な設定を可能にしている要因のひとつでしょう。 また、月末や四半期末など、不動産会社が成約を急ぐ可能性が高い時期や、地域密着型の中小不動産会社の方がある程度の値引きをしてもらえる可能性は高いでしょう。 購入・借りる物件が築古の中古物件や、販売期間・募集期間が3カ月以上経過している物件では、不動産会社側も柔軟な対応をしてくれるかもしれません。立地条件に課題がある物件や、大規模修繕が必要な物件なども同様です(そもそもそういった物件は、物件価格も安いため、手数料が大きな負担になる可能性も低いのですが)。 ここまで、仲介手数料の値引きについて紹介してきたのですが、当社では原則仲介手数料の値引きを行っていません(笑)。これには、きちんとした理由があるからです。
仲介手数料の値引き交渉のリスクと注意点
仲介手数料の値引き交渉には、いくつかのリスクや注意すべき点が存在します。主要なリスクと注意点について解説していきます。 優先順位が下がるリスク 過度な値引き交渉は、不動産会社側の対応優先順位を下げてしまう可能性があります。特に人気物件の購入や賃貸契約の場合、他の候補者よりも後回しにされてしまいます。 需要の高い物件は、当然ながら競争率が高まります。そういったなかで、不動産会社への報酬である仲介手数料の値引きを持ち出された場合、たとえ値引きがなされなくても「面倒な顧客」として優先順位が下げられてしまう可能性があるため注意が必要です。 広告宣伝費が削られるリスク 売主が仲介手数料の値引きを交渉したことにより、不動産会社が物件の広告宣伝費を削減する可能性もあります。 前項の優先順位が下がることと似ていますが、仲介手数料はその物件を販売するための広告宣伝費の原資にもなります。値引くことで販売活動の範囲や質に影響を与える可能性があるのです。 広告宣伝活動がどれだけできるかは、売却期間や売却価格に大きく影響します。そのため、手数料はそのままで、充実した販促活動を行ってもらうことが、結果的に大きなプラスになるといったケースも少なくありません。 「囲い込み」の被害に遭うリスク 不動産売却時、売主が支払う仲介手数料が値引きになるケースで最もリスクだと考えられるのが、この「囲い込み」です。 不動産売却における「囲い込み」とは、自社で買い手を見つけ、売却も購入も自社でのみ成約させようとする行為です。他社から紹介される購入検討者に対しては物件を紹介せず、買主も自社で見つけ、先述した売主・買主両方から仲介手数料を得る「両手仲介」を得ようとする営業手法です。 売主からすれば、本来であればもっと早期に高く売却できたかもしれませんが、不動産会社の意向により機会損失してしまうのです。 そういった会社では、しばしば仲介手数料の大幅な値引きが、売却依頼を受けるエサとして扱われることがあります(場合によっては仲介手数料無料を謳う会社もあります)。 不動産売却を依頼する媒介契約の内容によっては、契約期間中は他の不動産会社に売却を依頼することができず、売主は身動きが取れない状況に追い込まれてしまいます。 結果として、手数料の値引きによって得られるはずだった数十万円の節約が、売却価格の大幅な目減りという形で、数百万円規模の損失につながることも珍しくありません。