《安倍政権5年》アベノミクスで雇用改善 背後にある日本経済の構造変化
女性中心の非正規増加で平均賃金は減少傾向
失業率はリーマン・ショックで高まった後、低下し続けています。完全失業率は、民主党政権が発足した2009年9月に5.4%だったものが、2013年1月には4.2%にまで低下しており、さらに最近でみると2017年8月はほぼ下限とみられる2.8%にまでなりました。このような変化から、アベノミクスによる特有の効果とは言えないとの主張があります。けれども、雇用者数の増加についてはアベノミクス以降での傾向になっています。では、この雇用増加はアベノミクスの効果でしょうか。ある程度は景気回復との関係があると思いますが、それだけとは言い切れません。というのも、特に増加しているのが女性と高齢者で、医療・福祉などのサービス業での増加だからです。
就業または求職中の人数を労働人口といいます。女性では、専業主婦で職を求めていないという人も多いので、労働人口は少なめです。さて、男性の労働人口は、少子高齢化に伴い1990年代後半から低下が続いていますが、一方で、女性は2013年ごろから顕著に増加しいて、女性の労働参加が進んでいます。「労働力調査」をみると、2017年8月の女性の就業者数は2013年1月と比べて198万人も増加しています(全国、季節調整値)。一方で男性は72万人の増加にとどまっています。 2013年は、ちょうど団塊の世代が65歳に達した時期と重なります。この時期から高齢者や女性の労働参加率(労働力人口比率)が増加したのは、医療・福祉などのサービス業での団塊世代を中心として需要増加に対する求人が増えたことに加えて、女性の就業意欲の高まりや、65歳以上でも働き続けようという労働供給があることが要因と考えるのが自然です。 賃金が上昇しないのは、労働需要の増加が産業構造の変化に伴うものだからと考えられます。就業者数は、製造業では中期的なトレンドとして低下し続けていますが、医療・福祉などのサービス業では増えています。介護などのサービス業は、どうしても人手が必要で効率化が難しいと思われます。正規職員は増えにくく、また、全体の平均賃金を押し上げるような産業にもなりにくいのです。 例えば、「労働力調査」(2017年8月)で介護事業等雇用者内訳を見ると、女性では約54%がアルバイトなどの非正規職員として働いています。卸売業、小売業では約60%とさらに高い割合になっています。男性ではそれぞれ約26%と約23%なので、男女で雇用形態が異なっていて、女性を中心とした非正規職員の雇用増加では平均賃金はむしろ下がります。 世帯では増えていそうですが、そうではなく、家計調査で「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」で世帯の収入を見ても増加は確認できません。(世帯によりますが)二人以上の収入を合わせると世帯での収入が増加したというわけでもありません。 このような状況を踏まえた上で、図1で産業別就業者数の推移をみると、就業という点で産業構造の変化が中長期的に発生しており、男女でその影響が異なることが分かります。グローバル化の中で、国内製造業などでの労働需要が低下する一方で、少子高齢化に伴い、サービス業での需要は高まりました。とくに医療・福祉では女性への求人が多く、また、女性の労働人口も増えました。