「日本企業で熱意あふれる社員は6%のみ」の衝撃…給料も仕事のやりがいも長期低落なのに、社員を「お金のかかるコスト」扱いする日本企業の問題点
社員の幸福を重視し始めたアメリカの大企業
日本とは対照的にアメリカの大企業は社員の仕事への満足度、幸福度を高める方向へとマネジメント(経営・管理)の舵を切っています。 イリノイ大学のエド・ティーナー名誉教授らの研究よって、幸福度の高い社員はそうでない社員と比べて創造性が3倍、生産性や売り上げもそれぞれ3割強、4割弱も高い傾向が明らかになりました。幸福度が高い人は欠勤率や離職率が低いという事実もわかってきました。 こうした研究を踏まえて、アメリカでは社員の幸福度を測るEH(Employee Happiness=従業員幸福度)と呼ぶ尺度が開発され、グーグルを筆頭に、社員の幸福度を高めるための役職であるCHO(Chief Happiness Officer=最高幸福責任者)を設ける企業が次々に出てきているのです。
あなたが「やる気」を取り戻すために
アメリカとの格差も含めて、何だか口惜しくなりますね。 そんな口惜しい話を本書の全編にわたって詳述する狙いは二つあります。 一つは、ほかならないあなた自身のキャリアアップのためです。 あなたの会社の経営がどう間違っているのかを知ることは、あなたが職業人生の勝者になるために必要な武器になるはずです。 まずあなたは自分を苛む心の痛みから解放されるでしょう。次にキャリアアップに向けた道筋を描けるようになるでしょう。 例えばこんな道筋です。 1、現状の誤ったマネジメントがいかに社員の意欲を挫いてしまうかを理解していない経営者や上司に改善を促す。 2、改善されればそれでよし。 3、改善されなければ「会社には未来は無い」と、これまでの経営から脱却しようとしている企業に転職する。あるいは敢えて会社に残り、副業を始めたり、起業の準備をしたりする。 もちろん経営者や上司に改善を促すような回りくどい努力などせず、すぐに転職の準備をするのもいいでしょう。本書巻末の「おわりに」でも触れますが、すべての日本企業が社員をお金のかかるコストだとみなす「縮み経営」の罠に陥ってしまったわけではもちろんありません。これまでの経営を変えようという大企業も少しずつ増えてきました。その意味では、今は危機対応の「縮み経営」がようやく変わりつつある過渡期だと言えます。 あなたがやる気を取り戻し、キャリアアップを実現するチャンスは拡大しているのです。 写真/shutterstock ---------- 渋谷和宏(しぶや かずひろ) 経済ジャーナリスト・作家・大正大学表現学部客員教授 1959年横浜市生まれ。84年法政大学経済学部を卒業後、日経BP社入社。日経ビジネス副編集長などを経て2002年4月『日経ビジネスアソシエ』を創刊、編集長に。ビジネス局長(日経ビジネス発行人、日経ビジネスオンライン発行人)、日経BPnet総編集長などを務めた後、14年3月末、日経BP社を退職し、独立。日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』などに、コメンテーターとして出演中。 ----------