「富士山噴火」で「噴石」を降らせる噴火「2タイプ」をシミュレーション…知っておくべきは「危険範囲」と「火口位置」
富士山でプリニー式の噴火が起きたら
プリニー式噴火とは、噴煙が何万メートルも高く上がる大規模な噴火である。噴煙とともに空高く巻き上げられた軽石や火山灰は、いずれ地上に降りそそぐ。噴煙柱の風下側で大量の降下火砕物を堆積させるのが、このタイプの特徴である。 1980年のセントヘレンズ火山や1991年のピナトゥボ火山、日本では阿蘇山や北海道の支笏湖(しこつこ)のある支笏カルデラが代表的な例で、1707年の富士山宝永噴火もこのタイプと考えられている。 宝永噴火に代表されるようなプリニー式噴火の場合には、噴石の到達距離の上限は4キロメートルとされている。たとえば宝永火口から4キロメートルの距離にある太郎坊には、落ちてきた噴石が地面にめり込んでいるところがある。 このような経験値から、富士山でプリニー式噴火が起きた場合の噴石の最大到達距離は、4キロメートルとされた。これ以上離れておけば、プリニー式噴火でも、噴石に十分対応できるというわけである。
富士山でストロンボリ式の噴火が起きたら
ストロンボリ式噴火とは高温のマグマが噴水のように空高く上がり、弧を描いて火口の近くに落ちる噴火タイプをいう。ストロンボリ式噴火は、粘性の小さい玄武岩のマグマ噴火によって起こる(この名は、イタリアのストロンボリ火山の噴火にちなむ。なお、頂上にある、この火山の3つの火口では、10分ほどの間隔で小規模の噴火が絶えず起きており、何千年ものあいだ続いていて、いまも夜には花火のような美しい光景が見られる) 短い間隔でマグマのしぶきや固まりかけたマグマが高く上がり、そののちバラバラと放物線を描いてゆっくりと落ちる現象は、溶岩噴泉とも呼ばれる。マグマのしぶきを連続的に、あるいは間欠的に放出しながら、泉のように噴き上げるからである。 規模が大きな噴泉が起こると、マグマは火口底を飛び出して、上空数百メートルまで上がる。まれに火山弾が、火口から1キロメートルも飛ぶことがある。 富士山で、このストロンボリ式噴火が起きた場合の噴石の到達距離は、経験的に、ブルカノ式噴火で飛ぶ噴石の平均的な到達距離と同じくらい、もしくはそれよりも短いと判断された。 たとえば、近年の桜島火山では、ブルカノ式噴火を起こしたときの噴石は山頂火口から2キロメートルくらいまで飛んでいる。これを参考にして、ストロンボリ式噴火が起きた場合も噴石の到達距離は最大2キロメートルとされた。富士山では、これらの2つのケースに分けて、噴石の到達距離の上限を考えておけばよい。 なお、粒径の小さな火山礫が出た場合には、風のないときには右の数字よりも到達距離が短くなる。その反対に、風が強く吹いている場合には、風下側ではかなり遠方まで運ばれることにも、注意していただきたい。