「消臭力」がトイレから寝室まで勢力を広げた執念、消臭芳香剤大手・エステーの新拡大戦略とは?
リラックス効果をもたらす森の成分は、家庭だけでなくオフィスなどの需要もあるとみている。今後、積極的に商品を投入していく構えだ。 ■「創業家」に頼らない経営へ脱皮 エステーの会社の体制も大きく変化している。過去10年間は、前社長の鈴木貴子会長を始めとした創業家が経営の根幹を担ってきた。一方、昨年6月から舵取りを担う上月社長は1987年にエステーに入社後、営業やマーケティングなどを経験してきた生え抜きの社長だ。
「これまで、社内には創業家出身の社長が言ったことに従い、それで失敗しても仕方ないという風土が正直あった。今後は全員経営で、社員がアイデアを自分から提案できるよう働きかけていく」と、上月社長は意気込む。 たとえば、若手社員を対象にしたプログラムでは、社外講師による経営に関するレクチャーや海外でのフィールドワークを実施。その後、新事業に関するプレゼンテーションを経営層に行い、期待値の高いアイデアの事業化を目指す。
芳香剤ではP&G、ペットケアではユニ・チャームなど、ライバルとの差は大きい。消臭芳香剤、ペットケア、独自技術など、それぞれ新発想でシェアを奪取できるか。上月社長の手腕が問われることになる。
伊藤 退助 :東洋経済 記者