「消臭力」がトイレから寝室まで勢力を広げた執念、消臭芳香剤大手・エステーの新拡大戦略とは?
上月洋社長は消臭力の拡大余地についてこう語る。「部屋の数を考えれば、本来6個程度は消臭芳香剤を置けるはず。今後は書斎や子供部屋なども狙えるかもしれない。パーソナルな空間での集中力の向上や、ストレス緩和といった付加価値は受け入れられると期待している」 かつて柔軟剤市場も「柔らかくする」機能に香りという価値が加わり、市場が拡大していった。消臭芳香剤でも、それぞれの部屋のニーズに合わせた香りの開発やコンセプトづくりがカギになりそうだ。
■猫の健康チェックにポテンシャル 消臭芳香剤と並んで投資を強化するのがペットケアだ。ペットケアを含むホームケア事業は売上高の1割程度にすぎないが、今年6月に花王から譲受した猫用システムトイレ「ニャンとも清潔トイレ」関連事業をテコに、育成を進める考えだ。 期待を寄せる商品の一つが、ニャンとも清潔トイレの「おしっこチェックキット」。尿を採取するキットで量や濃度を確認し、猫の健康状態を手軽に確認できる商品だ。キットを動物病院で検査し、猫を病院に連れて行く必要性があるかを事前に調べられる。
花王時代はECを中心に販売していたが、現在はドラッグストア等への営業を強化している最中だ。エステーの持つ消臭の技術とかけ合わせた商品開発も進め、拡販を狙っていく。 「猫の寿命は伸びており、1頭にかける金額も上がっている。猫は病気を隠す傾向にあるため、手遅れになる前に気づける健康チェックの商品は伸びしろがある。今後ベンチャー企業との連携や、猫がリラックスできる香りの開発など、猫のウェルネス領域を強化したい」(上月社長)
新規事業への投資も強化する。核となるのが、森林研究の中で発見した技術「クリアフォレスト」の活用だ。北海道の樹木であるトドマツから抽出した成分で、消臭効果や大気汚染低減、森林浴の効果があるという。 これまで法人向けに原料供給や一部自社商品の開発も行ってきたものの、売り上げ規模は大きくなかった。足元では、クリアフォレストのリラックス効果を利用したアロマスティック「ルナマイン」を新たに立ち上げた。手首などに塗って気分転換できることをアピールし、ドラッグストアでの拡販を計画している。