東京・葛飾区が区立中学の修学旅行を完全無償化へ 1人8万円の負担がゼロに その狙いとは?
東京都葛飾区は、家庭における教育費の負担増を考慮して、区立中学校の修学旅行の費用を、所得制限を設けずに完全無償化する考えを発表しました。来年3月の区議会の審議を経て、実施される予定です。なぜ無償化に踏み切ったのか、背景を区の担当者に伺いました。 【写真】学費は年間700万超!留学人気のイギリスの全寮制学校 ■無償化した背景は? 東京都葛飾区の公立中学校では、3年次に2泊3日の修学旅行へ出かけている。京都・奈良へ行く学校がほとんどであるが、交通費や宿泊費、食事代、体験費などを含めると、一人当たりおよそ7万円の費用がかかっており、現在これらの費用は各家庭で全額負担している。負担の大きさから分割で費用を支払っている家庭も多いという。 区は、来年度から修学旅行の費用を公費で負担する考えを発表した。対象となるのは区内の公立中学3年生・約2900人で、近年の物価も踏まえて1人8万円程度、計2億3000万円あまりの支出を見積もっている。 教育委員会事務局の羽田顕学務課長は、その経緯を次のように話す。 「葛飾区では、教育環境の充実、教育にかかる保護者の負担軽減の取り組みの一環として、すでに2023年度から給食費を完全無償化しています。今回の修学旅行費も含め、無償化すると区の支出は増えますが、さまざまな事業見直しや業務の効率化といった取り組みを継続することにより必要な財源を捻出できると見込んでいます。ご家庭におかれましては、経済的な不安なく安心してお子様を学校へ通わせると同時に、子どもたちにもいろいろな体験をしてほしいと思います」 ■修学旅行を断念せざるを得ない生徒をとりこぼさない 子育て世帯や教育に対する支援策のなかで、修学旅行の費用に定めた理由はなにか。 「おもな理由はふたつあります。ひとつめが教育にかかる費用として修学旅行は保護者の負担が決して小さなものではないこと。もうひとつは、公正性の観点の話になりますが、修学旅行は学校単位で行うので個人による金額のばらつきがないことです」 経済格差が進んでいる昨今では、少数ながら経済的事情から修学旅行を断念せざるをえない生徒もおり、そんな生徒をとりこぼさない配慮もあったという。