評論家が選ぶクドカンドラマ「ベスト5」 3位木更津キャッツアイ、2位不適切にもほどがある…1位は
クドカンドラマの真骨頂とは
碓井:「いだてん」はクドカン最大の異色作にして意欲作だったと思います。間違いなくトライアルでした。だけれども、クドカンの良さであるユーモア精神であるとか遊び心は、大河という枠には合わなかったと思わざるを得ません。しかも、この作品は、たとえコロナ禍であっても東京オリンピックをやるんだ、盛り上げなければいけないんだという政府の意向があり、その国策イベントをNHKは支援せざるを得なかった。そうした難しい状況の中で制作されました。クドカンは主人公に“日本のマラソンの父”と呼ばれる金栗四三(中村勘九郎)と東京オリンピック招致に尽力した田畑政治(阿部サダヲ)を持ってきたものの、それだけじゃつまらないので古今亭志ん生(ビートたけし/森山未來)を持ってきた。クドカンならではの手練手管を使って、何とか彼なりのユーモアと遊びを実現しようとするんだけど、やればやるほど「NHKのバックにある、国策イベントのアシストかよ」と視聴者から思われ、いつものようなみんなが拍手できる作品にはならなかった。 ――では、先に挙げていただいた5本のドラマ、順位をつけるとどうなるのだろうか。 碓井:あえて順位をつけると、1位は「あまちゃん」。やっぱりクドカンの最高傑作だと思っています。2位は放送中の「不適切にもほどがある!」。「あまちゃん」から10年が経って、その間のクドカンが全部ぶち込まれているように思います。3位は「木更津キャッツアイ」、これが彼の脚本家としての出発点だと思いますし、クドカンとしてのいい部分が出ていた。4位は「タイガー&ドラゴン」、5位は「俺の家の話」としたいと思います。 ――クドカンドラマの真骨頂とは何だろうか。 碓井:やはり、設定と人物、そして台詞、この3つがクドカンならではの発想で描かれています。「こんな人物いるかよ、でもいるかも、いたらいいな」という秀逸な人物設定があること。台詞については、「この言葉が出るか!」とみんな心の中で思っていたというか、忘れていたり、でも奥底で聞きたかったりした言葉で、ど真ん中を射貫いてくる。驚くんだけれど納得できる、しかも、その背後にはクドカン独特のユーモアセンスが光っていることだと思います。
デイリー新潮編集部
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